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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第5章 Fly me to the Moon

…月城…!…月城…!
助けて…!
日報に筆を走らせていた月城はふと手を止めた。
…梨央様…?
梨央の叫び声が聞こえたような気がして、思わず目を上げ、耳をすませる。
…しかし、聞こえるのは窓硝子を叩き始めた雨粒と唸るような風の音だけだ。
…空耳だ…。
梨央様は今頃、縣様の山荘でぐっすりお寝みの筈だ。
…梨央様のことばかり考えているから、空耳するのだ…。
月城は苦笑する。
…とその時、遠くの空で稲光が光ったかと思うと、数秒後、浅間山の方向に雷が落ちる振動と雷鳴が轟いた。
月城ははっと立ち上がり、窓に走り寄る。
…あそこは…縣様の山荘がある場所だ…。
浅間山の麓に集中的に落雷しているのを確認すると、月城の中に何とも言えない胸騒ぎが起こった。
…雷…梨央様はさぞや怖がっておいでだろうな…。
今すぐに駆けつけたい衝動に駆られる。
…だが、縣様がいらっしゃるのだ。
出すぎた真似をしてはならない。
…私はただの第二執事なのだから…。
自分に言い聞かせるように寂しく呟くと、月城は再び執務机の前に座る。
…と、その瞬間再び雷鳴が轟き、机の上のランプの灯りがふっと消えた。
月城は眼鏡の奥の瞳を見開く。
…月城!…月城!
…助けて!…怖い!怖い!
暗くて怖いの!
確かに梨央の泣き叫ぶ声が聞こえた。
…梨央様が…泣いておられる…!
「梨央様!」
月城は立ち上がる。
そして素早く上着を羽織ると車の鍵を手に、執務室を後にした。
廊下を足早に歩いていると、雷を聞きつけたらしい光が部屋着にストールを羽織った姿で現れた。
「月城、どこにいくの?」
月城は振り返り、光を見つめて短く答えた。
「…梨央様のお側にまいります。…梨央様が私を呼んでいらっしゃいます」
光が訝しげに何か問う間も無く、月城は階段を降り始める。
「待って!私も行くわ!」
光は慌てて月城の後を追いかけた。
雷鳴と落雷はなおも激しくこの別荘にも迫りつつあった。
助けて…!
日報に筆を走らせていた月城はふと手を止めた。
…梨央様…?
梨央の叫び声が聞こえたような気がして、思わず目を上げ、耳をすませる。
…しかし、聞こえるのは窓硝子を叩き始めた雨粒と唸るような風の音だけだ。
…空耳だ…。
梨央様は今頃、縣様の山荘でぐっすりお寝みの筈だ。
…梨央様のことばかり考えているから、空耳するのだ…。
月城は苦笑する。
…とその時、遠くの空で稲光が光ったかと思うと、数秒後、浅間山の方向に雷が落ちる振動と雷鳴が轟いた。
月城ははっと立ち上がり、窓に走り寄る。
…あそこは…縣様の山荘がある場所だ…。
浅間山の麓に集中的に落雷しているのを確認すると、月城の中に何とも言えない胸騒ぎが起こった。
…雷…梨央様はさぞや怖がっておいでだろうな…。
今すぐに駆けつけたい衝動に駆られる。
…だが、縣様がいらっしゃるのだ。
出すぎた真似をしてはならない。
…私はただの第二執事なのだから…。
自分に言い聞かせるように寂しく呟くと、月城は再び執務机の前に座る。
…と、その瞬間再び雷鳴が轟き、机の上のランプの灯りがふっと消えた。
月城は眼鏡の奥の瞳を見開く。
…月城!…月城!
…助けて!…怖い!怖い!
暗くて怖いの!
確かに梨央の泣き叫ぶ声が聞こえた。
…梨央様が…泣いておられる…!
「梨央様!」
月城は立ち上がる。
そして素早く上着を羽織ると車の鍵を手に、執務室を後にした。
廊下を足早に歩いていると、雷を聞きつけたらしい光が部屋着にストールを羽織った姿で現れた。
「月城、どこにいくの?」
月城は振り返り、光を見つめて短く答えた。
「…梨央様のお側にまいります。…梨央様が私を呼んでいらっしゃいます」
光が訝しげに何か問う間も無く、月城は階段を降り始める。
「待って!私も行くわ!」
光は慌てて月城の後を追いかけた。
雷鳴と落雷はなおも激しくこの別荘にも迫りつつあった。

