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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第5章 Fly me to the Moon
「…梨央様は私の大切なご主人様です。
私は梨央様を全身全霊でお守りするつもりです。
…けれど、そこに恋愛感情はございません」
月城の胸にあの日のあの言葉が蘇る。

…執事は決して、ご主人様に恋してはならない。
橘が言った言葉だ。
…私は梨央様に恋してはならない。
絶対に…どのようなことがあっても…。
例え、この胸が張り裂けそうになるほど、梨央様が愛しくても…。

縣が眉を顰め、月城を見つめる。
心を推し量るかのような眼差しだ。
「…本当に?梨央さんを愛してはいないのだな?」

…私は私の恋心を永遠にこの胸に閉じ込める…。
「はい。もちろんです。ご主人様として、大切に思っているだけでございます」
縣は安堵したように小さく息を吐く。
「…そうか…。それならば…私が将来、梨央さんに求婚しても、君を傷つけないのだね?」
「はい。…縣様、私は縣様ほど梨央様に相応しいお方はおられないと存じます。
縣様こそが梨央様をお幸せにして下さる唯一の方だと…」
月城は縣をじっと見つめる。
その言葉に嘘偽りはなかった。
縣なら…
優しく頼もしく深く、梨央を愛してくれるだろう…。
「…ありがとう、それを聞いて安心したよ。
私は君が好きだし、君にはずっと梨央さんの側で、梨央さんに仕えて欲しいからね」
「身に余る光栄でございます」
縣はいつものように朗らかに微笑み、握手を求めて来た。
…暖かく大きな手が、月城の手を強く握る。
縣の友愛の気持ちが直に伝わる。
「忙しいのに邪魔をしたね。それでは失礼するよ。
私はこれからまた海外に行かなくてはならない。
…軽井沢の夏も見納めだ」
縣は爽やかに笑い、扉に向かう。
「お帰りはいつ頃ですか?」
「クリスマス前かな。北白川家のクリスマスの晩餐会には出席できるよ」
「心よりお待ち申し上げております」
「では、君も息災で…」
縣が廊下に出ようとした時、月城は縣に声をかけた。

「縣様、…梨央様はあの夜のことを何ひとつ覚えておられません」
縣の瞳が月城を捉え、じっと見つめる。
「ですから…梨央様の唇に触れた者はまだ誰もいないのです」
縣が静かに頷く。
そして、慈しみの眼差しで月城を見つめ
「…ありがとう、月城。君はやはり完璧な執事だ」
そう語りかけると、静かに部屋を後にした。

月城は、暫く空を眺めていたがやがて小さく息を吐き、美しい所作で茶器を片付け始めた。
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