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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第2章 My Fair Lady
翌日から月城は、目が回るような忙しい毎日を過ごした。
朝は誰よりも早く起き、まずは配達された新聞にアイロンをかける。
それを素早く伯爵の従者、狭霧に渡す。
「…ありがとう、新人君。頑張って」
狭霧は目を惹く美貌と妙な色気を兼ね備えた従者だ。
十年来、北白川伯爵に仕えていて伯爵が海外に戻る時にも同行する。
伯爵の美しき影のような人物だ。
「あ、ありがとうございます…」
狭霧に艶っぽい眼差しで微笑みかけられるとどきまぎする月城だ。
…美しい旦那様には美しい従者か…。
「お前が旦那様を耀かせるような存在にならねばならない」
…なれるのかな…。
水も滴るような美青年の狭霧を見ると、全く自信はない。

庭師から届いた温室の花を玄関ホール、ダイニングルーム、広間に生ける。
その後は、ダイニングテーブルのセッティング、急いで厨房に戻り、でき上がった朝食を素早く運ぶ。

厨房では料理長の春が、きびきびと指示を出す。
「さあさあ、私の自慢のキドニービーンズが冷めちまう前にダイニングルームに運んでおくれ!」
皿の持ち方は大が親切に教えてくれた。
「…女を扱うみたいに優しくかつ大胆に持つのさ」
と、ウィンクしてみせたが、若い月城にはまだピンとこない。
そうこうしていると執事の橘の威厳に満ちた声が響く。
「何をもたもたしている。旦那様も梨央様もテーブルにお着きだぞ」
「はい!」
月城は大の後に続き階上への階段を駆け上がる。
「バタバタするな。優雅に上品に!…お前は酒場のボーイではない。名門、北白川伯爵家の下僕なのだぞ」
「はい!」
静かに、足音を立てないようにダイニングルームを歩く。

縦長のマホガニーの大テーブル。
真っ白なリネンがかかっている。
端と端に北白川伯爵と梨央が座っている。

伯爵は、上質なシャツにふんわり結んだリボンタイがエレガントだ。ジャケットはパリで誂えた物らしい。
髪を無造作に流しているのが様になる美男子ぶりだ。
…図書館で見た雑誌の欧米のシネマ俳優みたいだ。
月城はうっとりする。

梨央は薄桃色のワンピースドレス。
ポニーテールに結った髪の根元には薔薇色の透けるリボンが結ばれている。
白い練絹のような肌に黒い瞳が輝いている。
朝日に照らされた頬は薔薇色だ。
梨央は月城を見て、にこにこ笑った。
…可愛いな…梨央様…。
月城の胸はきゅんと締め付けられる。




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