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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第2章 My Fair Lady
最初は静かに朝食を摂っていた梨央だが、キャロットラペがテーブルに配されると、顔を顰め皿を奥に押しやった。
それを目ざとく見つけた乳母のますみが、梨央に注意する。
「お嬢様、好き嫌いはなりませんよ。人参もお召し上がり下さい」
「…人参、嫌い」
梨央は薔薇色の頬を膨らませる。
…不機嫌な顔も可愛いな…。
月城は思わず微笑む。
向かい側の伯爵も、慈しむように笑う。
「梨央は人参が嫌いか。…私も得意ではないから似たのだね」
ますみが呆れたように溜息を吐く。
「まあ、旦那様。そのように甘いことを仰って…。梨央様、人参も召し上がらなくてはなりません。人参はとても栄養があるのですよ」
梨央はいやいやをしてべそをかきそうになる。
「いや!だって嫌いなんだもの」
後ろに控えていた月城は思わず、梨央にそっと声をかけていた。
「…梨央様は、うさぎはお好きですか?」
梨央は涙が滲んだ綺麗な瞳で月城を振り返る。
「…うさぎさん?大好き…。この間、お父様と上野動物園に行った時に抱っこしたの…」
月城はしゃがみこんで梨央に笑いかける。
「それは良かった。うさぎは人参が大好物なのですよ。梨央様が人参を召し上がると、うさぎはもっと梨央様を好きになってくれるかも知れません」
「…本当?梨央が人参を食べると、うさぎさんとお友達になれる?」
梨央の一途な瞳が愛らしい。
「はい。きっと喜びますよ」
梨央は小さく頷くと、可愛らしい華奢な手で、フォークを持ち、キャロットラペを口に運ぶ。
そして、ちょっと驚いたように呟く。
「…美味しい」
月城は明るく笑う。
「それは良かったです。
…うさぎはもちろん、料理長の春さんも喜びます。春さんは梨央様が美味しく召し上がって下さることを考えて毎日、料理を作っているのです」
梨央は恥ずかしそうに月城を見つめる。
「…後で春に、ごめんなさいしに行く。…いつも人参残してたから…」
「春さんは飛び上がって喜びます。…迫力ありますよ」
梨央が鈴を転がしたような声で笑う。
伯爵がそんな2人を微笑ましげに見守る。
「…どうだ?橘。…美しき姫君に傅く美しき執事見習いの絵は。実に美麗だろう?私は美しいものが大好きだ」
執事の橘は唇の端にわずかな笑みを浮かべ、すぐに元の厳めしい顔に戻り、伯爵に告げる。
「…まだまだこれからでございますよ。旦那様。執事への道は長く厳しいのです」
それを目ざとく見つけた乳母のますみが、梨央に注意する。
「お嬢様、好き嫌いはなりませんよ。人参もお召し上がり下さい」
「…人参、嫌い」
梨央は薔薇色の頬を膨らませる。
…不機嫌な顔も可愛いな…。
月城は思わず微笑む。
向かい側の伯爵も、慈しむように笑う。
「梨央は人参が嫌いか。…私も得意ではないから似たのだね」
ますみが呆れたように溜息を吐く。
「まあ、旦那様。そのように甘いことを仰って…。梨央様、人参も召し上がらなくてはなりません。人参はとても栄養があるのですよ」
梨央はいやいやをしてべそをかきそうになる。
「いや!だって嫌いなんだもの」
後ろに控えていた月城は思わず、梨央にそっと声をかけていた。
「…梨央様は、うさぎはお好きですか?」
梨央は涙が滲んだ綺麗な瞳で月城を振り返る。
「…うさぎさん?大好き…。この間、お父様と上野動物園に行った時に抱っこしたの…」
月城はしゃがみこんで梨央に笑いかける。
「それは良かった。うさぎは人参が大好物なのですよ。梨央様が人参を召し上がると、うさぎはもっと梨央様を好きになってくれるかも知れません」
「…本当?梨央が人参を食べると、うさぎさんとお友達になれる?」
梨央の一途な瞳が愛らしい。
「はい。きっと喜びますよ」
梨央は小さく頷くと、可愛らしい華奢な手で、フォークを持ち、キャロットラペを口に運ぶ。
そして、ちょっと驚いたように呟く。
「…美味しい」
月城は明るく笑う。
「それは良かったです。
…うさぎはもちろん、料理長の春さんも喜びます。春さんは梨央様が美味しく召し上がって下さることを考えて毎日、料理を作っているのです」
梨央は恥ずかしそうに月城を見つめる。
「…後で春に、ごめんなさいしに行く。…いつも人参残してたから…」
「春さんは飛び上がって喜びます。…迫力ありますよ」
梨央が鈴を転がしたような声で笑う。
伯爵がそんな2人を微笑ましげに見守る。
「…どうだ?橘。…美しき姫君に傅く美しき執事見習いの絵は。実に美麗だろう?私は美しいものが大好きだ」
執事の橘は唇の端にわずかな笑みを浮かべ、すぐに元の厳めしい顔に戻り、伯爵に告げる。
「…まだまだこれからでございますよ。旦那様。執事への道は長く厳しいのです」