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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第5章 Fly me to the Moon
月城が屋敷の方に去ったのを確認したのち、光は梨央の髪を愛おしげに撫でながら、尋ねる。
「…ねえ、梨央さん。貴方、本当にあの夜のことを覚えていらっしゃらないの?」
梨央はアイスクリームを掬う手を止めて、少し困ったように光を見上げた。
「ええ。そうなの。…雷が落ちたところまでは、記憶があるのですけれど…でも、なぜ?」
「…なんでもないわ。
…ねえ、梨央さん。私とパリに留学される話、考えて下さった?」
「…え、ええ…」
戸惑う梨央に光は優しく頬を撫でる。
「…梨央さん、私とパリに行きましょう。…学校も楽しいものよ?梨央さんは賢いし、穏和なご性格だからすぐに慣れるわ。…それに…このまま日本にいたら、いずれは貴方は縣様とご結婚なさらなくてはならなくなるわ…」
梨央ははっとしたように、光を見つめた。
「それでも構わないの?」
「わからないの…。梨央は結婚ということがどういうものか、まだ想像もできないの…」
憂いを帯びた表情は、美しく艶めいてさえいた。
「…縣様のことはお慕いしています。お美しくて、お優しくて、知的で、頼もしくて…非の打ち所のないお方だわ…。
私みたいな未熟な子供にはもったいない方…。私をとても愛して下さっていることも分かったわ…。
縣様と結婚したら…おそらく私は幸せになるであろうことも…」
「…では…」
梨央は首を振る。
「わからないの…。どうしたら良いのか…。
だって梨央はまだ14歳よ?
初恋もまだ知らないのに…どうしたら…」
光は俯いた梨央の顔を両手で包み込み、顔を近づける。
「…恋をしたことがないのね…梨央さんは」
「…ええ、ないわ」
光の瞳は明るい陽射しの下で見ると金色にも褐色にも碧色にも見える高貴な猫のような瞳であった。
その瞳にまるで魔法をかけられたようにうっとりと見つめる梨央…。
「…月城は?恋をしていないの…?」
「…月城は…」
不意に月城の顔が生々しく蘇る。
月城が梨央を抱きしめ、熱いくちづけを求めてくる…。
それに応える梨央…。
…⁉︎
なぜ⁉︎なぜ、こんなことを思い浮かべるの⁉︎
私は…私は月城にこんなことを望んだりしていないのに…!
なぜ、こんないやらしい想像をしてしまうの⁉︎
梨央は狼狽し、首を振る。
…それとも…。
梨央は息を飲む。
…私は…月城とこうなりたいの?
…月城にくちづけをしてほしいと願っているの…?
「…ねえ、梨央さん。貴方、本当にあの夜のことを覚えていらっしゃらないの?」
梨央はアイスクリームを掬う手を止めて、少し困ったように光を見上げた。
「ええ。そうなの。…雷が落ちたところまでは、記憶があるのですけれど…でも、なぜ?」
「…なんでもないわ。
…ねえ、梨央さん。私とパリに留学される話、考えて下さった?」
「…え、ええ…」
戸惑う梨央に光は優しく頬を撫でる。
「…梨央さん、私とパリに行きましょう。…学校も楽しいものよ?梨央さんは賢いし、穏和なご性格だからすぐに慣れるわ。…それに…このまま日本にいたら、いずれは貴方は縣様とご結婚なさらなくてはならなくなるわ…」
梨央ははっとしたように、光を見つめた。
「それでも構わないの?」
「わからないの…。梨央は結婚ということがどういうものか、まだ想像もできないの…」
憂いを帯びた表情は、美しく艶めいてさえいた。
「…縣様のことはお慕いしています。お美しくて、お優しくて、知的で、頼もしくて…非の打ち所のないお方だわ…。
私みたいな未熟な子供にはもったいない方…。私をとても愛して下さっていることも分かったわ…。
縣様と結婚したら…おそらく私は幸せになるであろうことも…」
「…では…」
梨央は首を振る。
「わからないの…。どうしたら良いのか…。
だって梨央はまだ14歳よ?
初恋もまだ知らないのに…どうしたら…」
光は俯いた梨央の顔を両手で包み込み、顔を近づける。
「…恋をしたことがないのね…梨央さんは」
「…ええ、ないわ」
光の瞳は明るい陽射しの下で見ると金色にも褐色にも碧色にも見える高貴な猫のような瞳であった。
その瞳にまるで魔法をかけられたようにうっとりと見つめる梨央…。
「…月城は?恋をしていないの…?」
「…月城は…」
不意に月城の顔が生々しく蘇る。
月城が梨央を抱きしめ、熱いくちづけを求めてくる…。
それに応える梨央…。
…⁉︎
なぜ⁉︎なぜ、こんなことを思い浮かべるの⁉︎
私は…私は月城にこんなことを望んだりしていないのに…!
なぜ、こんないやらしい想像をしてしまうの⁉︎
梨央は狼狽し、首を振る。
…それとも…。
梨央は息を飲む。
…私は…月城とこうなりたいの?
…月城にくちづけをしてほしいと願っているの…?