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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第5章 Fly me to the Moon
光は一度、梨央をぎゅっと抱きしめるとそののち静かに離し、湿っぽくならないように陽気に言った。
「さあ、今夜は私の送別会をしてくださるのよね?
梨央さんもうんとお洒落してね。軽井沢の写真技師を呼んであるからご一緒に記念写真を撮りましょう」
「…ええ、光お姉様」
梨央は微笑みながら頷く。
「では梨央さんにお似合いのドレスを探して来るわ」
…と、光はしなやかに寝台から立ち上がり扉のところまで歩いたが…ふと、まるで何かを思い出したかのように梨央を振り返った。
「…ねえ、梨央さん」
「なあに?お姉様」
「…先日の縣様の別荘の夜のことだけれども…」
「ええ…」
「…あの夜、貴女の喘息の発作を止めたのは月城よ」
「…え?」
梨央が不思議そうに眉を上げる。
光の瞳が艶やかな色を纏う。
「…月城が貴女に口移しでお薬とお水を飲ませたの」
「…⁈」
梨央の瞳が驚きで見開かれる。
「…何度もよ…縣様の目の前で…」
梨央の透き通るように白い頬が、見る見るうちに薔薇色に染まる。
信じられないように震える華奢な白い手が、その美しい両頬を抑える。
「…もちろん、月城は貴女の命を守る為に必死で行なった行為でしょうけれどね…」
「…月城が…」
譫言のように呟く梨央に、光は少し寂しげに
「…まるでこの世のものとは思えないほど美しい光景だったわ…」
と囁き、そっと部屋を後にした。
「…月城が…私に…口移しで…」
梨央はまだ小刻みに震える指先で自分の唇にそっと触れる。
その刹那、甘い衝撃と共に月城の端正な面影が蘇った。
…幾度か夢に見た月城の情熱的なくちづけ…。
月城の熱い唇…。
胸の鼓動が高鳴る。
「…あれは…夢ではなかったの…」
梨央は甘く苦しく疼く胸を押さえながら、暫く身じろぎも出来なかった。
「さあ、今夜は私の送別会をしてくださるのよね?
梨央さんもうんとお洒落してね。軽井沢の写真技師を呼んであるからご一緒に記念写真を撮りましょう」
「…ええ、光お姉様」
梨央は微笑みながら頷く。
「では梨央さんにお似合いのドレスを探して来るわ」
…と、光はしなやかに寝台から立ち上がり扉のところまで歩いたが…ふと、まるで何かを思い出したかのように梨央を振り返った。
「…ねえ、梨央さん」
「なあに?お姉様」
「…先日の縣様の別荘の夜のことだけれども…」
「ええ…」
「…あの夜、貴女の喘息の発作を止めたのは月城よ」
「…え?」
梨央が不思議そうに眉を上げる。
光の瞳が艶やかな色を纏う。
「…月城が貴女に口移しでお薬とお水を飲ませたの」
「…⁈」
梨央の瞳が驚きで見開かれる。
「…何度もよ…縣様の目の前で…」
梨央の透き通るように白い頬が、見る見るうちに薔薇色に染まる。
信じられないように震える華奢な白い手が、その美しい両頬を抑える。
「…もちろん、月城は貴女の命を守る為に必死で行なった行為でしょうけれどね…」
「…月城が…」
譫言のように呟く梨央に、光は少し寂しげに
「…まるでこの世のものとは思えないほど美しい光景だったわ…」
と囁き、そっと部屋を後にした。
「…月城が…私に…口移しで…」
梨央はまだ小刻みに震える指先で自分の唇にそっと触れる。
その刹那、甘い衝撃と共に月城の端正な面影が蘇った。
…幾度か夢に見た月城の情熱的なくちづけ…。
月城の熱い唇…。
胸の鼓動が高鳴る。
「…あれは…夢ではなかったの…」
梨央は甘く苦しく疼く胸を押さえながら、暫く身じろぎも出来なかった。