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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第6章 あの月の頂で
広い車寄せにメルセデスがすべりこむ。
縣家の下僕が恭しく、ドアを開ける。
そこには既に縣が待ちかねたように佇み、車から降り立つ梨央に手を差し伸べる。
「ようこそいらっしゃいました。梨央さん」
黒い上質な仕立ての燕尾服にホワイトタイ。
髪を品良く撫でつけているが、一筋の髪がはらりと額に落ちているのが成熟した男の色気を醸し出している。
端正な顔に笑みを浮かべ、梨央を愛おしそうに出迎える。
「…無理を申したのではないかと、ずっと心配しておりました」
梨央の手を大切そうに握りしめ、縣は問う。
「梨央さんは大勢の人がいるところが苦手でいらっしゃるのに…」
縣の優しい心遣いを嬉しく思い、梨央は微笑みながら首を振る。
「いいえ、縣様。私ももう16歳です…色々と大人にならなければと思っています。良い機会をいただいたと感謝いたしております」
誠実な梨央の言葉に縣は眼を細める。
「すっかり大人になられましたね。…そして…今日の梨央さんは息が詰まるほどお美しい…!本当は私以外の人に見せたくないほどです」
縣は梨央の姿をじっと見つめる。
…パーティということで、髪を大人っぽく結い上げ、綺麗にカールしている。
薄く化粧した頬はバラ色、唇は珊瑚のような艶やかさだ。
舶来品の高価なドレスも梨央の生来の高貴な美しさを引き立て、西洋絵画から抜け出してきたような美しい姫君の姿がそこにあった。
「…本当にお美しい…」
縣はそっと指先で梨央の頬を撫でる。
梨央は恥ずかしそうに俯いた。
車寄せには次々に来賓が到着する。
横に立つ縣家の執事がそっと知らせる。
「…天月陸軍閣下とご令室様がご到着です」
「今行くよ。…梨央さん、これを…」
縣は見事な白薔薇で出来た髪飾りを梨央に差し出す。
「新種の白薔薇がようやく咲きました」
薔薇好きな梨央は眼を見張る。
「まあ!なんて美しい…!…これを私に?」
縣は優しく微笑みながら、薔薇の髪飾りを梨央の髪に器用に飾る。
「良くお似合いです。…まるで薔薇の精のようだ」
少し控えめだった梨央の髪が華やかに装われ、花の香気すら漂うようだった。
梨央は恥じらいつつも嬉しそうに礼を述べる。
「ありがとうございます。縣様。薔薇は大好きですわ」
縣は少年のようにやや照れつつ、梨央の美しい手を取りその甲にくちづけをした。
「…どういたしまして。我が愛しの白薔薇の姫君」
縣家の下僕が恭しく、ドアを開ける。
そこには既に縣が待ちかねたように佇み、車から降り立つ梨央に手を差し伸べる。
「ようこそいらっしゃいました。梨央さん」
黒い上質な仕立ての燕尾服にホワイトタイ。
髪を品良く撫でつけているが、一筋の髪がはらりと額に落ちているのが成熟した男の色気を醸し出している。
端正な顔に笑みを浮かべ、梨央を愛おしそうに出迎える。
「…無理を申したのではないかと、ずっと心配しておりました」
梨央の手を大切そうに握りしめ、縣は問う。
「梨央さんは大勢の人がいるところが苦手でいらっしゃるのに…」
縣の優しい心遣いを嬉しく思い、梨央は微笑みながら首を振る。
「いいえ、縣様。私ももう16歳です…色々と大人にならなければと思っています。良い機会をいただいたと感謝いたしております」
誠実な梨央の言葉に縣は眼を細める。
「すっかり大人になられましたね。…そして…今日の梨央さんは息が詰まるほどお美しい…!本当は私以外の人に見せたくないほどです」
縣は梨央の姿をじっと見つめる。
…パーティということで、髪を大人っぽく結い上げ、綺麗にカールしている。
薄く化粧した頬はバラ色、唇は珊瑚のような艶やかさだ。
舶来品の高価なドレスも梨央の生来の高貴な美しさを引き立て、西洋絵画から抜け出してきたような美しい姫君の姿がそこにあった。
「…本当にお美しい…」
縣はそっと指先で梨央の頬を撫でる。
梨央は恥ずかしそうに俯いた。
車寄せには次々に来賓が到着する。
横に立つ縣家の執事がそっと知らせる。
「…天月陸軍閣下とご令室様がご到着です」
「今行くよ。…梨央さん、これを…」
縣は見事な白薔薇で出来た髪飾りを梨央に差し出す。
「新種の白薔薇がようやく咲きました」
薔薇好きな梨央は眼を見張る。
「まあ!なんて美しい…!…これを私に?」
縣は優しく微笑みながら、薔薇の髪飾りを梨央の髪に器用に飾る。
「良くお似合いです。…まるで薔薇の精のようだ」
少し控えめだった梨央の髪が華やかに装われ、花の香気すら漂うようだった。
梨央は恥じらいつつも嬉しそうに礼を述べる。
「ありがとうございます。縣様。薔薇は大好きですわ」
縣は少年のようにやや照れつつ、梨央の美しい手を取りその甲にくちづけをした。
「…どういたしまして。我が愛しの白薔薇の姫君」