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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第6章 あの月の頂で
梨央が少しずつテーブルの令嬢達と馴染みながら、楽しげに会話をしているのを見て、月城は感無量になる。
生まれてこのかた、学校に通ったことのない梨央にはいわゆる友達がいない。
広大な屋敷に引きこもる生活をしているので、なかなか同年代の令嬢達と知り合うきっかけがないのだ。
自然と屋敷の使用人やごく限られた親戚としか交流を結ばないことになる。
梨央自身は引っ込み思案な性格なので、屋敷に引きこもる生活で満足してしまっているので、尚更人見知りが加速するという具合だった。
昨年執事を引退した橘は
「梨央様の人見知りをなんとか直していただかなくては、デビュッタントも迎えられない」
と気を病んでいたほどだ。
しかし父の北白川伯爵は、橘にやんわりと訴えられていても
「良いではないか。梨央は感受性が豊かで繊細なのだ。時期が来れば自然に人の輪に入れるようになるだろう。焦ることはない」
そう鷹揚に笑い、まるで幼子のように伯爵の膝に乗る梨央の髪を愛しげに撫でた。
その時の橘の眉間の皺や、やれやれといったように首を振った姿を思い出しては、月城は小さく笑みを漏らした。
…橘さんに見せて差し上げたかったな…。
梨央様のこのお姿を…。

そしてふと思う。
…もしかすると縣様は梨央様のお友達が出来ることを願われて、このお茶会にご招待されたのではないか?

やや離れた席で政界、財界のお偉方に囲まれ、しかし全く臆することなく和やかに談笑している縣を見る。
…本当にご立派な方だ…。
月城の視線に気づいたのか、その魅惑的な目元で微笑し、梨央に視線をやる。
楽しげに周りの令嬢とお喋りを楽しんでいる梨央を優し気に見つめると再び月城に頷いてみせた。
…縣様…。
縣様は…本当に梨央様を愛しておられるのだ。
だからこそ、ここまで深く梨央様を思い遣ることがお出来になるのだ。
…やはり、縣様は梨央様に相応しいお方だ…。

慣れたはずの胸の痛みが疼く。
月城はそれを振り払うように、縣に向って心より謝辞をこめて一礼した。
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