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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第6章 あの月の頂で
縣の屋敷の温室に入ると、華子は豹変したように冷たく梨央の手を離した。
梨央はびくりと自分の手を握りしめる。
そんな梨央を知ってか知らずか、華子は優雅に温室内の薔薇を見て回る。
「本当に美しい薔薇だわ。…なんでも縣様は薔薇好きな梨央様の為に新種の薔薇の苗を取り寄せられたり、特別な薔薇を栽培されたり、心を砕かれておられるそうよ。…ご存知?」
「…い、いいえ…」
華子が振り返る。
美しい柳眉が跳ね上がっている。
「やっぱりね。…貴方は縣様の事を何もご存知ないのよ。いいえ…知ろうともなさっていない。あんなに縣様に愛されているのに。愛されるのが当たり前のように思っていらっしゃる。…なんて傲慢な方!」
剥き出しの憎悪の感情を向けられた梨央は思わず後ずさりする。
「…そんな…そんなこと…」
華子の瞳がきらりと光る。
「では、貴方は縣様を愛しているの?」
はっと息を呑む梨央。
答えに詰まる梨央を華子は蔑むように睨めつけた。
「…思った通りだわ。…貴方は縣様を愛していない。それどころかなんとも思っていないのだわ。…酷い方ね」
「そ、そんなことありませんわ!
わ、私は…縣様をお慕いしております。…お慕いして、心からご尊敬申し上げております…!」
梨央はありったけの勇気を振り絞り、震える声で反論した。
華子はふっと冷たい笑みを漏らした。
「ご尊敬ねえ…尊敬と恋は違うわ。そんなことも分からないような幼稚な方に私は縣様を譲るつもりはないわ!」
「…華子様…?」
華子は梨央から顔を背け、悔しさを隠そうともせずに唇を噛みしめる。
「私は…ずっと縣様が好きだった…我が家の夜会で初めてあの方にお会いして以来、ずっと縣様だけを昼も夜も思い続けてきたと言うのに…!」
梨央はびくりと自分の手を握りしめる。
そんな梨央を知ってか知らずか、華子は優雅に温室内の薔薇を見て回る。
「本当に美しい薔薇だわ。…なんでも縣様は薔薇好きな梨央様の為に新種の薔薇の苗を取り寄せられたり、特別な薔薇を栽培されたり、心を砕かれておられるそうよ。…ご存知?」
「…い、いいえ…」
華子が振り返る。
美しい柳眉が跳ね上がっている。
「やっぱりね。…貴方は縣様の事を何もご存知ないのよ。いいえ…知ろうともなさっていない。あんなに縣様に愛されているのに。愛されるのが当たり前のように思っていらっしゃる。…なんて傲慢な方!」
剥き出しの憎悪の感情を向けられた梨央は思わず後ずさりする。
「…そんな…そんなこと…」
華子の瞳がきらりと光る。
「では、貴方は縣様を愛しているの?」
はっと息を呑む梨央。
答えに詰まる梨央を華子は蔑むように睨めつけた。
「…思った通りだわ。…貴方は縣様を愛していない。それどころかなんとも思っていないのだわ。…酷い方ね」
「そ、そんなことありませんわ!
わ、私は…縣様をお慕いしております。…お慕いして、心からご尊敬申し上げております…!」
梨央はありったけの勇気を振り絞り、震える声で反論した。
華子はふっと冷たい笑みを漏らした。
「ご尊敬ねえ…尊敬と恋は違うわ。そんなことも分からないような幼稚な方に私は縣様を譲るつもりはないわ!」
「…華子様…?」
華子は梨央から顔を背け、悔しさを隠そうともせずに唇を噛みしめる。
「私は…ずっと縣様が好きだった…我が家の夜会で初めてあの方にお会いして以来、ずっと縣様だけを昼も夜も思い続けてきたと言うのに…!」