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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第6章 あの月の頂で
床に座り込み、白薔薇を握りしめ静かに涙を流す梨央に、華子は見下すように声を放つ。
「そうやってお泣きになるだけ?私に言い返す勇気も気概もお持ちではないのね。
…だから貴方はお人形なのよ…!」

…と、そこに慌ただしい靴音が響き、温室の扉が開く音と同時にバリトンの美声が聞こえた。
「梨央様…!梨央様!こちらにいらっしゃいますか?」
「…月城…」
茫然とした表情のまま梨央は小さく呟く。
華子はふっと嘲笑う。
「…良かったですわね。梨央様の騎士が登場だわ。
…美しき姫君の危機に駆けつける美貌の騎士…。まるで三文オペレッタみたい」
月城が、床に崩れ落ちている梨央を見つけ、形相を変えながら足早に近づく。
「梨央様!どうされましたか⁉︎」
華子は月城とすれ違いざまに冷たく言い放つ。
「梨央様は大切な髪飾りを誤って踏んでおしまいになって大変傷ついておいでなの。
…ハンサムな執事さん、慰めて差し上げて?」
月城は華子を振り返る。
華子は唇を歪めて鼻先で笑う。
そして、床に座り込んで動かない梨央に白々しいほど甘い声で挨拶した。
「ご機嫌よう、梨央様。またお目にかかれる日を楽しみにしておりますわ」
華子は高笑いを響かせながら、扉の外に姿を消した。

華子の姿が見えなくなった瞬間、梨央は泣き崩れた。
月城は梨央に駆け寄り、思わずその身体を抱きしめた。
「梨央様!…一体、何があったのですか⁉︎」
「…月城…!月城…!」
梨央は子供のように月城の名前を呼び続け、泣きながら胸に縋る。
「梨央様!…華子様に…何をされたのですか⁉︎」
梨央は激しく首を振る。
「…な、なにも…何もされていないわ…」
「しかし、この髪飾りは…」
梨央の手の中の無残な白薔薇を見て息を飲む。
…間違いない。 華子様がこの薔薇を踏み躙ったのだ。
なぜそんな酷いことを…!
抱きしめる梨央の白く華奢な腕にルビーのような血が薄っすらと浮いているのを見つける。
「お怪我をされている…」
月城は胸の白いチーフを素早く梨央の腕に巻く。
梨央はそれを見ながら再び泣きじゃくる。
「…帰りたい…お家に帰りたい…連れていって…月城…」
梨央は月城に縋り付いたまま、子供のように繰り返す。
月城の胸は、張り裂けたかのように激しく痛んだ。
梨央を強く抱きしめ、髪を優しく撫でる。
「…梨央様…承知いたしました。帰りましょう…」


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