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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第6章 あの月の頂で
お茶会から数日経った。
梨央は体調を崩し、ずっと部屋に引き込もっている。
…あの日、帰宅してから月城に腕の手当てをして貰いながら、梨央はずっと泣いていた。
まるで小さな子供に還ってしまったかのように、しくしくと泣き続け、月城が用事で部屋を出ようとすると
「行かないで、月城…ここにいて…側にいて…どこにも行かないで…」
と取り乱しながら懇願した。
月城はそんな梨央に胸が締め付けられる。
その華奢な冷たい手を握りしめ、優しく励ますように答えた。
「はい。…ここにおります。どこにも行きません」
「本当よ…?梨央が寝付くまで側にいて…?」
昔のように、梨央はぎゅっと月城の手を握りしめ離さない。
不安な時の梨央の癖であった。
「はい。梨央様がお寝みになるまで、ずっとお側におります」

…本当は、16歳になる伯爵令嬢の寝室に二人きりで居ることなど言語道断であった。
しかし、月城はこのことでもし咎められ、首になっても構わなかった。
…今は、梨央様のお側にいたい…!
梨央様に少しでも安心していただきたい。
…私は梨央様をお護りすることができなかった…!
梨央様をあんなに怖い思いをさせてしまった…!
私は…執事失格だ!
その忸怩たる思いが月城を梨央に傾倒させた。
…梨央様の心の傷をなんとかして癒してさしあげたい。
月城の願いはそれだけだったのだ。

…月城に手を握られながら、梨央はようやく眠りに就いた。
白い絹のナイトドレスを身につけて眠る梨央は、まるでオーロラ姫のように美しく儚げであった。
月城は、梨央の涙の跡が残る白い頬をそっと撫でた。

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