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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第6章 あの月の頂で
「…礼也君からまた手紙だ。梨央の様子が心配だからぜひ、見舞いに行きたいと」
書斎で、今しがた到着したばかりの縣からの手紙を、丁寧に読み終えると北白川伯爵は優雅な仕草で月城にそれを渡す。

…北白川伯爵が従者の狭霧を伴い、ロンドンから帰国したのは、縣のお茶会の翌日だった。
華子の一件から発熱し、寝込んでしまった梨央を伯爵は大層心配し、梨央の寝台から暫く離れようとしなかった。
「…可哀想に…そんなにショックなことがあったのだね」
梨央の熱い額を、大きな掌で癒すように優しく当てる。
梨央は熱に喘ぎながらも、父の帰国に喜びの笑みを浮かべた。
「…お父様…ごめんなさい。…お迎えもできなくて…」
伯爵は梨央の白くほっそりとした美しい手を握りしめ、唇を当てる。
「…そんなことは気にしなくて良いのだ。ゆっくり寝みなさい。私はずっとここにいるよ…」
「…お父様…嬉しい…」
梨央は目尻からひとすじの涙を流し、再び瞼を閉じた。
伯爵は美しい眉を寄せ、後ろに控える月城に呟いた。
「…一体、何があったのだ…。月城」
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