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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第6章 あの月の頂で
月城が梨央の部屋を訪れると、梨央は窓辺の椅子に腰掛け、窓の外の景色を見るともなしに眺めていた。
まだ早い午前の春の光に照らされた横顔は、ミルクのように白く、美しく整った目鼻立ちを印象づける。
主治医の丹羽からは、まだ部屋の中での休養を勧められていることもあり、美しい髪も結い上げずにそのまま下ろしているのが梨央を年より幼く、そして頼りなげに見せていた。
月城が縣の手紙を手渡す。
梨央はゆっくり時間をかけてその手紙を読み、俯いた。
「…お返事は、どういたしましょうか?旦那様は梨央様のお気持ちを一番にと仰せられております」
梨央は暫く黙っていたが、やがて顔を上げて口を開いた。
「…縣様はお手紙で詫びておられるわ。縣様は何ひとつお悪くないのに…。ただ私が気弱で、意気地がないのがいけないのに…」
月城は眉を顰める。
「そのような…!」
「いいえ、そうなの。…私、華子様に言われて気づいたの。…私はお父様や月城に守られていないと何もできない無力な存在なのだと…。つくづく思い知らされたの」
「…梨央様…そのようなことはありません」
月城は強い眼差しで梨央を見つめる。
「梨央様はお美しくお優しく賢く気高く素晴らしいお方です。貴族の方々にも、屋敷の使用人にも決して別け隔てなく思いやりを持って接してくださいます。
梨央様は私の誇りです。お二人といない素晴らしいお嬢様です」
梨央は月城を見上げる。
そして儚げに微笑む。
「…ありがとう、月城…。
…でも私は…この屋敷の中でしか自信を持って過ごせないの。
…外の世界が怖いの…この間のように傷つくのが怖いの…」
「…梨央様…」
梨央は力なく首を振り再び俯いた。
「…こんな私では、縣様にお会いする資格はないわ…。
…申し訳ないけれど、お断りして…月城…」
ラベンダー色のジョーゼットのスカートの上に置かれた白く華奢な手に、ぽつりとひと粒の透明な涙が落ちた。
まだ早い午前の春の光に照らされた横顔は、ミルクのように白く、美しく整った目鼻立ちを印象づける。
主治医の丹羽からは、まだ部屋の中での休養を勧められていることもあり、美しい髪も結い上げずにそのまま下ろしているのが梨央を年より幼く、そして頼りなげに見せていた。
月城が縣の手紙を手渡す。
梨央はゆっくり時間をかけてその手紙を読み、俯いた。
「…お返事は、どういたしましょうか?旦那様は梨央様のお気持ちを一番にと仰せられております」
梨央は暫く黙っていたが、やがて顔を上げて口を開いた。
「…縣様はお手紙で詫びておられるわ。縣様は何ひとつお悪くないのに…。ただ私が気弱で、意気地がないのがいけないのに…」
月城は眉を顰める。
「そのような…!」
「いいえ、そうなの。…私、華子様に言われて気づいたの。…私はお父様や月城に守られていないと何もできない無力な存在なのだと…。つくづく思い知らされたの」
「…梨央様…そのようなことはありません」
月城は強い眼差しで梨央を見つめる。
「梨央様はお美しくお優しく賢く気高く素晴らしいお方です。貴族の方々にも、屋敷の使用人にも決して別け隔てなく思いやりを持って接してくださいます。
梨央様は私の誇りです。お二人といない素晴らしいお嬢様です」
梨央は月城を見上げる。
そして儚げに微笑む。
「…ありがとう、月城…。
…でも私は…この屋敷の中でしか自信を持って過ごせないの。
…外の世界が怖いの…この間のように傷つくのが怖いの…」
「…梨央様…」
梨央は力なく首を振り再び俯いた。
「…こんな私では、縣様にお会いする資格はないわ…。
…申し訳ないけれど、お断りして…月城…」
ラベンダー色のジョーゼットのスカートの上に置かれた白く華奢な手に、ぽつりとひと粒の透明な涙が落ちた。