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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第6章 あの月の頂で
「お、お待ちください‼︎縣様!い、今、旦那様にお取り次ぎいたしますので…!」
そろそろ、陽も落ちようかという黄昏時であった。
玄関ホールから下僕長の大の慌てた声が響いてくる。
不審に思った月城は、伯爵の支度部屋から急いで大階段へと向かった。
大階段の半ばを降りた頃、大を制しながら階段を急ぎ足で駆け上がる縣に遭遇した。
「縣様!いかがされましたか⁈」
月城の顔を見ると縣はほっと息を吐き、前髪をかきあげた。
整髪料をつけていない前髪が額に落ちかかり、縣を年よりも若く見せている。
身だしなみの良い縣がこのような姿で現れることは初めてだ。
仕立ての良い淡いブルーのシャツに紺色のテーラードジャケットを羽織っただけの姿というのも珍しい。
しかし端正な美男子なので、寧ろ若々しく爽やかに見えるのはさすがである。
「…伯爵に取り次いでくれ。…梨央さんにお会いしたいのだ」
切羽詰まる口調…。普段、決して慌てることのない落ち着いた優雅な紳士ぶりが何処へやら…である。
「…縣様…」
「伯爵のお返事を拝見した。梨央さんはお元気になられたが、まだ誰にも会いたくないと…」
「はい。…申し訳ありません…」
「君が謝ることはない。…梨央さんは、どんなご様子なのか?…私にも会いたくないとお思いなのか?」
自信のなさげな切ない表情…。
縣様ほどの、およそ大人の男なら全員が羨むような、手に入れてないものはなにもないような完璧な紳士が…なぜ、梨央様に関してだけは気弱になられるのか…。
「…いいえ。梨央様は、縣様にお会いする資格はないと仰せられています」
縣は眉を顰める。
「なぜそのようなことを⁉︎…いい、まずは伯爵に取り次いでくれ」
「かしこまりました。…どうぞこちらへ」
月城は静かに縣を伯爵の書斎へと誘った。
そろそろ、陽も落ちようかという黄昏時であった。
玄関ホールから下僕長の大の慌てた声が響いてくる。
不審に思った月城は、伯爵の支度部屋から急いで大階段へと向かった。
大階段の半ばを降りた頃、大を制しながら階段を急ぎ足で駆け上がる縣に遭遇した。
「縣様!いかがされましたか⁈」
月城の顔を見ると縣はほっと息を吐き、前髪をかきあげた。
整髪料をつけていない前髪が額に落ちかかり、縣を年よりも若く見せている。
身だしなみの良い縣がこのような姿で現れることは初めてだ。
仕立ての良い淡いブルーのシャツに紺色のテーラードジャケットを羽織っただけの姿というのも珍しい。
しかし端正な美男子なので、寧ろ若々しく爽やかに見えるのはさすがである。
「…伯爵に取り次いでくれ。…梨央さんにお会いしたいのだ」
切羽詰まる口調…。普段、決して慌てることのない落ち着いた優雅な紳士ぶりが何処へやら…である。
「…縣様…」
「伯爵のお返事を拝見した。梨央さんはお元気になられたが、まだ誰にも会いたくないと…」
「はい。…申し訳ありません…」
「君が謝ることはない。…梨央さんは、どんなご様子なのか?…私にも会いたくないとお思いなのか?」
自信のなさげな切ない表情…。
縣様ほどの、およそ大人の男なら全員が羨むような、手に入れてないものはなにもないような完璧な紳士が…なぜ、梨央様に関してだけは気弱になられるのか…。
「…いいえ。梨央様は、縣様にお会いする資格はないと仰せられています」
縣は眉を顰める。
「なぜそのようなことを⁉︎…いい、まずは伯爵に取り次いでくれ」
「かしこまりました。…どうぞこちらへ」
月城は静かに縣を伯爵の書斎へと誘った。