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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第6章 あの月の頂で
月城が伯爵の書斎の扉をノックすると同時に、縣が待ちきれないかのように扉の中に滑り込んだ。
「伯爵、お約束もないのに不躾に伺ったご無礼をどうかお許しください」
北白川伯爵は、書斎机の書類から顔を上げ、縣を見ると温かな笑みを浮かべる。
「礼也君。…君ならいつでも歓迎だ」
伯爵の書棚で本を仕舞っていた狭霧がうっとりするような眼差しで静かに提案する。
「お茶をご用意いたしますか?それともブランデーでも召し上がりますか?」
縣が素早く答える。
「いえ、結構です。…梨央さんのお部屋にお見舞いに伺います。ご安心ください。梨央さんには指一本触れません。
…お咎めでしたら、梨央さんにお会いしたあとにいくらでも受けます。失礼いたします…!」
縣は折り目正しく一礼し、風のように書斎を出た。
「縣様…!」
月城は慌てて縣の後を追った。
伯爵はふっと小さく笑いを漏らした。
「礼也君はやはり紳士だな。…私なら親に挨拶もせずに麗しの姫君の寝室に忍び込む」
狭霧は伯爵を軽く睨む振りをする。
「…旦那様、いささか品位に欠けるご冗談かと…」
「月城がついているのだ。不測の事態もないだろう。
それに…礼也君は誰よりも梨央を大切にしてくれているからな。狭霧、ブランデーを。…もしかすると乾杯が必要になるかも知れぬからな」
「…旦那様も酔狂な…」
苦笑しながら、狭霧はキャビネットに向った。
「伯爵、お約束もないのに不躾に伺ったご無礼をどうかお許しください」
北白川伯爵は、書斎机の書類から顔を上げ、縣を見ると温かな笑みを浮かべる。
「礼也君。…君ならいつでも歓迎だ」
伯爵の書棚で本を仕舞っていた狭霧がうっとりするような眼差しで静かに提案する。
「お茶をご用意いたしますか?それともブランデーでも召し上がりますか?」
縣が素早く答える。
「いえ、結構です。…梨央さんのお部屋にお見舞いに伺います。ご安心ください。梨央さんには指一本触れません。
…お咎めでしたら、梨央さんにお会いしたあとにいくらでも受けます。失礼いたします…!」
縣は折り目正しく一礼し、風のように書斎を出た。
「縣様…!」
月城は慌てて縣の後を追った。
伯爵はふっと小さく笑いを漏らした。
「礼也君はやはり紳士だな。…私なら親に挨拶もせずに麗しの姫君の寝室に忍び込む」
狭霧は伯爵を軽く睨む振りをする。
「…旦那様、いささか品位に欠けるご冗談かと…」
「月城がついているのだ。不測の事態もないだろう。
それに…礼也君は誰よりも梨央を大切にしてくれているからな。狭霧、ブランデーを。…もしかすると乾杯が必要になるかも知れぬからな」
「…旦那様も酔狂な…」
苦笑しながら、狭霧はキャビネットに向った。