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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第6章 あの月の頂で
車寄せに止められた縣家のロールスロイスの前に立ちながら、縣はゆっくりと月城を振り返る。
「…梨央さんにプロポーズしたよ」
そこには自慢や高慢な様子は一切なかった。
寧ろ月城を労わるような気遣わしげな眼差しであった。
月城は穏やかに微笑し
「おめでとうございます。心よりお慶び申し上げます」
祝いの言葉を述べた。
「…本当に、喜んでくれるのか?」
縣は月城を見つめる。
「君はずっと梨央さんを見て来た…私と同じくらいに長く…複雑な思いもあるのではないか?」
…相変わらずお優しい方だ。
私のような使用人に気遣う必要などないのに。
「はい。梨央様のお側で長年お仕えさせていただきました。…僭越ながら、縣様以上に梨央様のお相手として相応しい方はおられないと確信を持つ程に…。
縣様は梨央様の理想のお相手でいらっしゃいます」
「月城君…」
縣は安堵の溜息を吐いた。
「君は執事だけれども、私にとっては長年の心許せる友人のように感じている。
…これからも君とは良い関係でいたい」
大きく美しい手を差し出す。
「勿体無いお言葉を、ありがとうございます」
縣は月城の手を強く握りしめた。
「…君は理想の執事だ。いつまでも梨央さんのお側で仕えて欲しい。そして梨央さんをお護りしてくれ」
「身に余る光栄でございます。
はい、私の命に代えましても…」
…梨央様は私の全てですから…。
月城は心の中でそっと付け加える。
縣の乗ったロールスロイスが見えなくなるまで見送る。
…ふと、屋敷の方を振り返る。
梨央の部屋の窓辺に、こちらを見つめる梨央の姿があった。
二人の視線は濃密に絡まり…暫しの間見つめ合ったが、直ぐに月城の方からそっと外した。
そして梨央に静かに一礼すると、屋敷の中へと戻って行くのだった。
「…梨央さんにプロポーズしたよ」
そこには自慢や高慢な様子は一切なかった。
寧ろ月城を労わるような気遣わしげな眼差しであった。
月城は穏やかに微笑し
「おめでとうございます。心よりお慶び申し上げます」
祝いの言葉を述べた。
「…本当に、喜んでくれるのか?」
縣は月城を見つめる。
「君はずっと梨央さんを見て来た…私と同じくらいに長く…複雑な思いもあるのではないか?」
…相変わらずお優しい方だ。
私のような使用人に気遣う必要などないのに。
「はい。梨央様のお側で長年お仕えさせていただきました。…僭越ながら、縣様以上に梨央様のお相手として相応しい方はおられないと確信を持つ程に…。
縣様は梨央様の理想のお相手でいらっしゃいます」
「月城君…」
縣は安堵の溜息を吐いた。
「君は執事だけれども、私にとっては長年の心許せる友人のように感じている。
…これからも君とは良い関係でいたい」
大きく美しい手を差し出す。
「勿体無いお言葉を、ありがとうございます」
縣は月城の手を強く握りしめた。
「…君は理想の執事だ。いつまでも梨央さんのお側で仕えて欲しい。そして梨央さんをお護りしてくれ」
「身に余る光栄でございます。
はい、私の命に代えましても…」
…梨央様は私の全てですから…。
月城は心の中でそっと付け加える。
縣の乗ったロールスロイスが見えなくなるまで見送る。
…ふと、屋敷の方を振り返る。
梨央の部屋の窓辺に、こちらを見つめる梨央の姿があった。
二人の視線は濃密に絡まり…暫しの間見つめ合ったが、直ぐに月城の方からそっと外した。
そして梨央に静かに一礼すると、屋敷の中へと戻って行くのだった。