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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第2章 My Fair Lady
梨央の後ろ姿を見送っていると、橘が静かに月城に近づき、穏やかだが確固たる口調で話し始める。
「…お前に一番大切なことを伝えるのを忘れていた。
…使用人は、決してご主人様に恋をしてはならない。…例え、ご主人様に思いを寄せられたとしても…決して恋してはならないのだ…」
月城は橘の話を噛みしめるようにじっと聞き入っていたが、ゆっくりと橘を見上げ、寂しげな微笑を浮かべ頷いた。
「…はい。…分かっております…。私のような身分の者が、そのような恐れ多いことを…考えたこともございません…」
橘は一息吐いた。
そして視線を逸らした後に月城の肩を叩き、背中を向けるとゆっくりと部屋を後にした。
月城はぼんやりと、お伽話の城の部屋のようなダイニングルームを見回す。
数週間前までは、本の中の世界としか思えなかった場所だ。
美しく優しい旦那様、温かい同僚達、
…そして、美しい小さな姫君…
僕の生涯のご主人様…。
そこに自分がいて、働いている。
…その奇跡と幸福だけで充分なのだ。
「…梨央様に恋するなど…そんな恐れ多いことを…考えたこともありません…」
月城は自分に言い聞かせるようにそっと呟いた…。
「…お前に一番大切なことを伝えるのを忘れていた。
…使用人は、決してご主人様に恋をしてはならない。…例え、ご主人様に思いを寄せられたとしても…決して恋してはならないのだ…」
月城は橘の話を噛みしめるようにじっと聞き入っていたが、ゆっくりと橘を見上げ、寂しげな微笑を浮かべ頷いた。
「…はい。…分かっております…。私のような身分の者が、そのような恐れ多いことを…考えたこともございません…」
橘は一息吐いた。
そして視線を逸らした後に月城の肩を叩き、背中を向けるとゆっくりと部屋を後にした。
月城はぼんやりと、お伽話の城の部屋のようなダイニングルームを見回す。
数週間前までは、本の中の世界としか思えなかった場所だ。
美しく優しい旦那様、温かい同僚達、
…そして、美しい小さな姫君…
僕の生涯のご主人様…。
そこに自分がいて、働いている。
…その奇跡と幸福だけで充分なのだ。
「…梨央様に恋するなど…そんな恐れ多いことを…考えたこともありません…」
月城は自分に言い聞かせるようにそっと呟いた…。