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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第2章 My Fair Lady
その夜、待ちきれない梨央が月城の手を引っ張るように屋敷の図書室に連れて行く。
一階の奥にある図書室は、玄関ホールほどの広さがあり四方を天井まである書棚に囲まれている。
中央にはモロッコ皮のゆったりとしたソファがいくつか並べられており、ここでのんびりと本を楽しめるような配置になっている。
読書家の伯爵の所蔵する書籍の数と種類は大変なもので、…文学、歴史、芸術、科学、天文学、経済学、宗教書、高価な古文書など…その他多岐にわたる本の数々が収められているのだ。

月城はこの図書室に梨央に伴われて脚を運ぶようになって、その素晴らしい書籍の数々に毎回うっとりと魅せられていた。
…大学の図書館にも引けを取らない蔵書の数々だ…。
さすが旦那様だな。

梨央が童話や絵本の書棚のところに座り込み、月城を呼ぶ。
「今夜はこれがいい!」
差し出す絵本は、シンデレラだ。
美しい挿絵が沢山描かれた美麗なそれは梨央のお気に入りの一冊だ。
月城は微笑みながら近づき、絵本を受け取る。
「梨央様はシンデレラがお好きですね」
梨央はきらきらした瞳で月城を見つめる。
「ええ!…だってシンデレラみたいに舞踏会に行ってみたいんですもの!」
…舞踏会…。
貴族の令嬢の社交界デビューは16、7歳と聞く。
…梨央様はあと十年もすれば、舞踏会に行かれるのだ…。
そしてこの絵本のような、輝かしい貴公子に見染められ、ワルツを踊り…。
月城は絵本に目を落とし、切ない想像をする。
…梨央様がワルツを踊る相手は、決して僕ではないのだな…。
「…月城、どうしたの?」
沈んでしまった月城を案じるかのように心配そうな梨央の顔が覗き込む。
月城は明るい笑顔を作る。
「いえ、なんでもありません。…梨央様が舞踏会に行かれる時にはきっとシンデレラよりもっとお美しいお姿だろうなあと考えていたのです」
梨央は恥ずかしそうに顔を赤らめ、月城の膝に座った。
…高貴な花の香りの梨央様…。
貴方をこうやって無邪気に抱きしめられるのはいつまでなのか…。
胸の痛みを封じ込めるよう、シンデレラの絵本を開き梨央に見せる。

…と、図書室の入り口の扉が軽くノックされ、開かれる。
「…我が愛しの姫君は騎士と共にお勉強中かな」
部屋着姿の…しかし、目を見張るほど洗練された美しい伯爵が微笑みながら佇んでいた。
「お父様!」
梨央が嬉しそうに伯爵に駆け寄り、抱きつく。
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