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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第6章 あの月の頂で
「あの時、橘さんに忠告していただかなかったら、私は愚かにも恋に身を任せ、梨央様をお護りするという大義を忘れていたかも知れません。
私は梨央様を生涯お護りすることが出来るこの職を天命と思い、また誇りに思っております」
「…月城…」
「縣様は誠に梨央様に相応しいお相手でいらっしゃいます。そのお美しさ、家柄、財力、知性、お優しさ…どれも卓逸されていますが何より素晴らしいのは、梨央様を深く愛しておられることです。
…梨央様は必ずやお幸せになられることでしょう」
「…そうか…。そうだな…」
橘はしみじみと呟いた。
月城は昨日、梨央がやや名残惜し気に縣を見送る姿を、玄関でそっと見つめた。
縣に人目も憚らない別れ際の抱擁と額にキスをされ、その白絹のような美しい頬は薔薇色に染まっていた。
それは月城が初めて見る匂うように美しい艶めいた色だった。
…梨央様はきっとゆっくりと縣様との愛を育まれるだろう…。
…これで良かったのだ…。
どこまでも続く穏やかな蒼い海を見つめていると、橘が静かに、優しく声をかけた。
「…お茶にしよう。ここの家政婦の作る苺タルトは絶品なんだ。今日はお前が来ると聞いて張り切って作っておった」
月城は明るく笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。お茶は私が入れますよ」
橘は眉を上げ、にやりと笑う。
「まだまだヒヨッコのお前には任せられん。私が入れる」
二人は顔を見合わせて、声を上げて笑った。
私は梨央様を生涯お護りすることが出来るこの職を天命と思い、また誇りに思っております」
「…月城…」
「縣様は誠に梨央様に相応しいお相手でいらっしゃいます。そのお美しさ、家柄、財力、知性、お優しさ…どれも卓逸されていますが何より素晴らしいのは、梨央様を深く愛しておられることです。
…梨央様は必ずやお幸せになられることでしょう」
「…そうか…。そうだな…」
橘はしみじみと呟いた。
月城は昨日、梨央がやや名残惜し気に縣を見送る姿を、玄関でそっと見つめた。
縣に人目も憚らない別れ際の抱擁と額にキスをされ、その白絹のような美しい頬は薔薇色に染まっていた。
それは月城が初めて見る匂うように美しい艶めいた色だった。
…梨央様はきっとゆっくりと縣様との愛を育まれるだろう…。
…これで良かったのだ…。
どこまでも続く穏やかな蒼い海を見つめていると、橘が静かに、優しく声をかけた。
「…お茶にしよう。ここの家政婦の作る苺タルトは絶品なんだ。今日はお前が来ると聞いて張り切って作っておった」
月城は明るく笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。お茶は私が入れますよ」
橘は眉を上げ、にやりと笑う。
「まだまだヒヨッコのお前には任せられん。私が入れる」
二人は顔を見合わせて、声を上げて笑った。