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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第6章 あの月の頂で
「ねえねえ、おじいちゃん!この苺はもう摘んでもいいの?」
綾香のぞんざいな呼びかけに、橘がむっと眉に皺を寄せながら近づく。
「…私は貴女の祖父ではありません!橘と呼んでいただきます!」
憮然とした口調に、梨央が取りなすように笑いかける。
「橘、貴方の苺畑は相変わらず見事だわ。私は橘の苺以外は食べられないくらい、貴方の苺が大好きなの」
今顰めた眉をあっと言う間に元に戻し、橘は相好を崩しながら、梨央を優しく見つめる。
「ありがとうございます。梨央様。梨央様はすっかり大人びてお美しくなられて…亡くなったお母様に良く似ていらっしゃいましたな…」

ここは伊豆の別荘の橘の自慢の苺畑だ。
…あれから3年の月日が流れ、19歳になった梨央の傍らに仲良く寄り添うようにしているのは腹違いの姉、綾香である。
今日は橘から苺摘みの誘いの手紙が届き、梨央は初めて伊豆の別荘を訪れる綾香を伴い、久しぶりの訪問となったのだ。
「お姉様、見て!こんなに大きな苺!美味しそうでしょ?」
梨央が嬉しそうにはしゃぐ。
「本当だ!凄いね、おじいちゃん!」
外見は息を呑むほど大変な美貌の伯爵令嬢なのに、口を開くとがらっぱちな浅草の下町娘ぶりを露呈するのは相変わらずであった。
「橘です!…全く…下町訛りの伯爵令嬢など…世も末ですな…」
皮肉っぽく呟くのを聞き逃さずに
「やだやだ…このおじいちゃんてば月城そっくり!お高く留まっちゃってさあ。感じ悪いったらありゃしない!」
と大袈裟に肩を竦める。
すかさず梨央が甘く宥めにかかる。
「お姉様、橘は本当は優しいのよ。今日だってお姉様が見えるのを、楽しみにそわそわして待っていたのだもの。
…ね!橘?」
梨央に顔を覗き込まれて、橘は苦虫を噛み潰したような顔で咳払いをした。
「本当?ふ〜ん。素直じゃないんだから〜。そういう所も月城そっくりだね」
綾香はにやにや笑う。
橘はフン!とそっぽを向き
「お茶の支度をしてまいります!皆様、どうぞごゆっくり。…月城、お前はお嬢様方に付いて差し上げなさい」
と、肩をいからせながら畑を後にした。
梨央はくすくす笑う。
「橘は相変わらずね。元気で良かったわ」
「頑固な爺さんだけど、面白い爺さんだね」
綾香が梨央の髪を優しく梳き上げる。
そしてそのまま、美しい髪にキスをする。
梨央がうっとりと潤んだ瞳で綾香を見上げた。
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