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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第6章 あの月の頂で
苺畑の隣にある葡萄棚は橘の自慢の棚だ。
緑濃く薫り高い葡萄の葉が生い繁るまるで南仏のように異国情緒溢れるそれに、綾香は梨央を押し付け手首を上げさせて、その美しい顔中にくちづけの雨を降らせる。
まるで美女の磷付かお仕置きのような倒錯の絵に、月城は軽く眩暈を覚えるが、目を離すことが出来ない。
余りに淫らでそして梨央が妖しいまでに美しいからだ。

梨央は綾香のなすがままにされながらも、羞恥に身悶える。
「…い…や…お姉様…はずかしい…月城が…見て…いるわ…」
喘ぐように月城を気にする梨央に、綾香は笑いかける。
「…貴女の大切なハンサムな執事さんに、貴女が最も美しいところを見ていただくのよ…」
そうして綾香は月城を振り返り、高貴な麝香猫のように妖艶に笑った。
「…月城は貴女を見護るのがお仕事だから…ちゃんと見ていただきましょうね」
綾香は月城の梨央に対する秘めた想いを知っている。
だから時々、梨央の淫らで妖しい本性を曝け出し、見せつけようとする。
それは綾香と梨央の禁断の関係に、月城を加担させようとするかのような倒錯的なものだった。
月城は梨央に指一本触れることなく、綾香と梨央の愛の営みを見つめ続ける。
梨央は最初はその異常な状況に震え上がり、羞恥から泣き出したが、綾香の優しい慰めと濃厚な愛撫を受け、次第に身体が柔らかく蕩け出し、甘い啜り泣きを上げるようになった。
綾香は無意識に梨央の隠れた被虐性と淫靡な官能性を引き出していった。
昼間は聖女のように淑やかで清楚な梨央が、夜はまるで娼婦のように淫らで妖しい媚態を示し、甘く濡れた声を上げる。
そしてその行為の昂まりの絶頂で、必ず月城を見つめて潤んだ眼差しで誘うように笑うのだ。

…まるで三人で行う愛と淫らな性の営みのようだ…。
月城はこの状況に立ち会う度に、眩暈めいた息苦しさを感じ、またその陶酔に溺れていった。
綾香を通して自分が梨央を犯し、蹂躙しているかのような倒錯を覚えるからだ。
綾香は月城の気持ちを全て把握していた。
だからこそ、梨央を淫靡に啼かせ、隠花植物めいた花を存分に咲かせ、散らせようとするのだ。
それはまるで決して梨央をその腕に抱くことが出来ない月城への、綾香の奇妙な労りであり慰めでありそして、二人の聖なる関係性への嫉妬でもあった。
…三人はいつの間にか美しく淫らな秘めたる共犯者となっていたのだ。
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