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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第2章 My Fair Lady
伯爵はテーブルの上に置いてあるラテン語で書かれた古い本を手に取り、月城に話しかける。
「大学はどう?仕事と両立は大変ではないか?」
優しく案じるような口調に胸が温かくなる。
「はい。大学も仕事もとても楽しいので少しも苦になりません。大学では知らなかったことを知識として得られることに喜びを感じますし、お屋敷の仕事も覚えれば覚えるほどもっときちんと美しくできるようになりたいですし…執事の橘さんの知識や教養の深さや、橘さんのなさることの完璧さには毎日敬服しています」
ついつい熱が入ってしまい、月城は思わず赤くなる。
「あ、すみません…」
伯爵は美しい目元に笑みを浮かべる。
「いや、嬉しいよ。月城はやはり私が見込んだ男だ。これからの北白川家と…そして梨央を守ってゆけるだけの知識と器量と…そして愛情を兼ね備えた…ね」
「…そんな…私などが…」
「私が不在がちだから梨央には寂しい思いをさせてしまっている。…私の分も梨央を愛して、護ってやってほしい…お前の大きな愛で…」
…大きな愛…。
梨央様を包み込めるような大きな愛…。
…そんな大きな頼もしい大人に…執事になりたい!
「…はい!…一生懸命勉強して、梨央様を護れる立派な執事になります」
月城の真摯な言葉と眼差しを受け、伯爵は優しく笑った。
「ありがとう。安心したよ」
伯爵は月城の肩に手を置きながら書棚に目をやり
「ここの本は全て、自由に読んで構わない。勉学に役立てなさい」
月城は目を見張る。
「あ、ありがとうございます!旦那様」
…その時、密やかなノックの音が響く。
「…失礼致します。旦那様、まだお仕事をされますか?」
狭霧がしなやかな動きで入って来た。
黒い制服の優雅なその姿は、まるで貴族の青年のようだ。
伯爵は柔らかく笑い、狭霧に近づく。
「ああ…外務大臣に返事を出さねばならないからな…。では、月城。おやすみ」
「お寝みなさいませ。旦那様」
狭霧が優雅な動きで、伯爵の肩にローブをかける。
「夜は冷えます。お風邪を召しませんように…」
「…ありがとう、狭霧…」
狭霧の細く美しい指と伯爵のしなやかな指がそっと触れ合う…。
月城は見てはいけないものを見てしまったかのようにどきどきする。
伯爵が立ち去る刹那、狭霧は月城を振り返り、美しい瞳で艶やかに笑った。
…僕はまだまだ…みたいだな…。
…胸の高鳴りはなかなか収まらない。
「大学はどう?仕事と両立は大変ではないか?」
優しく案じるような口調に胸が温かくなる。
「はい。大学も仕事もとても楽しいので少しも苦になりません。大学では知らなかったことを知識として得られることに喜びを感じますし、お屋敷の仕事も覚えれば覚えるほどもっときちんと美しくできるようになりたいですし…執事の橘さんの知識や教養の深さや、橘さんのなさることの完璧さには毎日敬服しています」
ついつい熱が入ってしまい、月城は思わず赤くなる。
「あ、すみません…」
伯爵は美しい目元に笑みを浮かべる。
「いや、嬉しいよ。月城はやはり私が見込んだ男だ。これからの北白川家と…そして梨央を守ってゆけるだけの知識と器量と…そして愛情を兼ね備えた…ね」
「…そんな…私などが…」
「私が不在がちだから梨央には寂しい思いをさせてしまっている。…私の分も梨央を愛して、護ってやってほしい…お前の大きな愛で…」
…大きな愛…。
梨央様を包み込めるような大きな愛…。
…そんな大きな頼もしい大人に…執事になりたい!
「…はい!…一生懸命勉強して、梨央様を護れる立派な執事になります」
月城の真摯な言葉と眼差しを受け、伯爵は優しく笑った。
「ありがとう。安心したよ」
伯爵は月城の肩に手を置きながら書棚に目をやり
「ここの本は全て、自由に読んで構わない。勉学に役立てなさい」
月城は目を見張る。
「あ、ありがとうございます!旦那様」
…その時、密やかなノックの音が響く。
「…失礼致します。旦那様、まだお仕事をされますか?」
狭霧がしなやかな動きで入って来た。
黒い制服の優雅なその姿は、まるで貴族の青年のようだ。
伯爵は柔らかく笑い、狭霧に近づく。
「ああ…外務大臣に返事を出さねばならないからな…。では、月城。おやすみ」
「お寝みなさいませ。旦那様」
狭霧が優雅な動きで、伯爵の肩にローブをかける。
「夜は冷えます。お風邪を召しませんように…」
「…ありがとう、狭霧…」
狭霧の細く美しい指と伯爵のしなやかな指がそっと触れ合う…。
月城は見てはいけないものを見てしまったかのようにどきどきする。
伯爵が立ち去る刹那、狭霧は月城を振り返り、美しい瞳で艶やかに笑った。
…僕はまだまだ…みたいだな…。
…胸の高鳴りはなかなか収まらない。