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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第2章 My Fair Lady
屋敷の玄関前の車寄せで月城は他の使用人達と整列し、来客を待っていた。
来客がある時は、一同が整列してお客様をお迎えするのが北白川伯爵家の決まりである。
それは伯爵と梨央も例外ではなく、玄関前には伯爵と手を繋ぎ、待機している梨央の姿があった。
今日の梨央は、真珠色のシフォンのワンピースドレスを着て、髪も綺麗にカールされ、紅色の繻子のリボンで結び、大変に美しく愛らしい。
ちらりと月城を振り返り、笑みを浮かべた梨央にどきりとする。
春の陽射しの中で透き通りそうな白い肌、濃く長い睫毛に縁取られた黒い宝石のような瞳、すんなりとした鼻、咲き始めの紅い薔薇のような唇…。
…梨央様、お綺麗だな…。
大人になられたら、どんなにお美しくなられるのか…。
楽しみであり、寂しくもある月城であった。
…その頃には、梨央様にはもう恋する方がいらっしゃるかも知れない…。
…いや、考えても仕方ないことだ。
小さく息を吐き、前を向いた時…
屋敷の門の方向から、1台のメルセデスが滑らかな動きで滑り込んで来るのが見えた。
メルセデスは車寄せに正確に止まる。
大が素早く車に近づき、恭しく後部座席のドアを開ける。
ゆっくりと優雅な所作で降り立つ青年の姿を見た瞬間、月城は小さく息を飲んだ。
…大学の馬場にいた青年だ…。
「馬術部の主将じゃあ。どこぞの貴族の御曹司らしい…。かっこええのう…」
轟の言葉が蘇る。
…あの青年が、縣様だったのか…。
あの日は乗馬服に身を包み、颯爽とした出で立ちで目を奪われたが、今日は更に素晴らしい青年貴族のスタイルである。
すらりと高い背にぴったりと合った舶来品らしき上質なジャケットにパンツ、真っ白な仕立ての良いシャツにアスコットタイを合わせているのが日本人離れした洒落た伊達男ぶりである。
品良く整えられた黒髪、男らしく整った端正な顔立ち、大人の余裕すら感じる優雅な立ち居振る舞い…。
生れながらの貴族の青年のテキストのような人だ…。
月城は無意識にきゅっと手を握りしめる。
…この方が、梨央様の後見人…。
来客がある時は、一同が整列してお客様をお迎えするのが北白川伯爵家の決まりである。
それは伯爵と梨央も例外ではなく、玄関前には伯爵と手を繋ぎ、待機している梨央の姿があった。
今日の梨央は、真珠色のシフォンのワンピースドレスを着て、髪も綺麗にカールされ、紅色の繻子のリボンで結び、大変に美しく愛らしい。
ちらりと月城を振り返り、笑みを浮かべた梨央にどきりとする。
春の陽射しの中で透き通りそうな白い肌、濃く長い睫毛に縁取られた黒い宝石のような瞳、すんなりとした鼻、咲き始めの紅い薔薇のような唇…。
…梨央様、お綺麗だな…。
大人になられたら、どんなにお美しくなられるのか…。
楽しみであり、寂しくもある月城であった。
…その頃には、梨央様にはもう恋する方がいらっしゃるかも知れない…。
…いや、考えても仕方ないことだ。
小さく息を吐き、前を向いた時…
屋敷の門の方向から、1台のメルセデスが滑らかな動きで滑り込んで来るのが見えた。
メルセデスは車寄せに正確に止まる。
大が素早く車に近づき、恭しく後部座席のドアを開ける。
ゆっくりと優雅な所作で降り立つ青年の姿を見た瞬間、月城は小さく息を飲んだ。
…大学の馬場にいた青年だ…。
「馬術部の主将じゃあ。どこぞの貴族の御曹司らしい…。かっこええのう…」
轟の言葉が蘇る。
…あの青年が、縣様だったのか…。
あの日は乗馬服に身を包み、颯爽とした出で立ちで目を奪われたが、今日は更に素晴らしい青年貴族のスタイルである。
すらりと高い背にぴったりと合った舶来品らしき上質なジャケットにパンツ、真っ白な仕立ての良いシャツにアスコットタイを合わせているのが日本人離れした洒落た伊達男ぶりである。
品良く整えられた黒髪、男らしく整った端正な顔立ち、大人の余裕すら感じる優雅な立ち居振る舞い…。
生れながらの貴族の青年のテキストのような人だ…。
月城は無意識にきゅっと手を握りしめる。
…この方が、梨央様の後見人…。