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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第2章 My Fair Lady
縣は車から降り立つと、北白川伯爵と梨央に恭しく一礼し、微笑みながら歩み寄る。
「本日はお招きいただき、ありがとうございます」
伯爵は魅惑的な微笑みを浮かべ、手を差し出す。
「ようこそ、礼也君。会いたかったよ」
縣はその手を洗練された所作で握りしめる。
「こちらこそ、お会いできて嬉しいです」
そして、隣でやや緊張した面持ちの梨央に優しく笑いかける。
「こんにちは、梨央さん。ご機嫌いかがですか?」
梨央は恥ずかしそうに、しかし、きちんと膝を折ってお辞儀をする。
その姿は小さいながらも立派な姫君だ。
「ご機嫌よう、縣様」
縣は手にしたうさぎのぬいぐるみを梨央に手渡す。
「この間お話したピーターラビットのぬいぐるみです。昨日ようやくイギリスから届きました。どうぞ、梨央さん」
梨央はきらきらと眼を輝かせる。
縣からぬいぐるみを受け取り、ぎゅっと抱きしめる。
「縣様、ありがとうございます!」
満面の笑みの梨央は無垢な天使のように美しい。
縣も思わず、嬉しそうに微笑む。
伯爵は梨央の頭を撫でながら、縣に礼を言う。
「ありがとう、礼也君。」
「いいえ、梨央さんに喜んでいただけたらこんなに嬉しいことはありません」
…美しくて、堂々としていて、優しくて…完璧な貴公子だな…。
月城は思わず、縣を見つめる。
…その視線を感じたのか、縣がふと首を巡らし、月城と眼が合う。
その聡明な瞳で月城を見たかと思うと、穏やかな笑みを浮かべ、伯爵に尋ねた。
「新しい下僕ですか?美しい青年ですね」
月城は慌てて前を向く。
伯爵は月城を見て微笑み、説明する。
「…我が家の執事見習いの月城だ。四月から帝大にも通っているのだよ。給費生試験で首席だったから推薦入学だ」
縣は眼を見張る。
「それは素晴らしい!北白川伯爵家の将来は安泰ですね。このような才色兼備な執事見習いがおられるのですから…。実に羨ましいことです」
縣は慈愛に満ちた眼差しで月城を再び見つめる。
「ありがとう、礼也君。大学で会う事があったらよろしく頼むよ」
「もちろんです。伯爵」
二人は和やかに談笑しながら玄関ホールに入る。
梨央は伯爵と縣の間を、にこにこしながら弾むように歩く。
…完璧な方だ…。
月城は小さく溜息を吐く。
伯爵の後ろに影のように控えていた狭霧が、そんな月城に優しく微笑みかけ、艶な眼差しを残して伯爵の後を優雅な足取りで従って行った。
「本日はお招きいただき、ありがとうございます」
伯爵は魅惑的な微笑みを浮かべ、手を差し出す。
「ようこそ、礼也君。会いたかったよ」
縣はその手を洗練された所作で握りしめる。
「こちらこそ、お会いできて嬉しいです」
そして、隣でやや緊張した面持ちの梨央に優しく笑いかける。
「こんにちは、梨央さん。ご機嫌いかがですか?」
梨央は恥ずかしそうに、しかし、きちんと膝を折ってお辞儀をする。
その姿は小さいながらも立派な姫君だ。
「ご機嫌よう、縣様」
縣は手にしたうさぎのぬいぐるみを梨央に手渡す。
「この間お話したピーターラビットのぬいぐるみです。昨日ようやくイギリスから届きました。どうぞ、梨央さん」
梨央はきらきらと眼を輝かせる。
縣からぬいぐるみを受け取り、ぎゅっと抱きしめる。
「縣様、ありがとうございます!」
満面の笑みの梨央は無垢な天使のように美しい。
縣も思わず、嬉しそうに微笑む。
伯爵は梨央の頭を撫でながら、縣に礼を言う。
「ありがとう、礼也君。」
「いいえ、梨央さんに喜んでいただけたらこんなに嬉しいことはありません」
…美しくて、堂々としていて、優しくて…完璧な貴公子だな…。
月城は思わず、縣を見つめる。
…その視線を感じたのか、縣がふと首を巡らし、月城と眼が合う。
その聡明な瞳で月城を見たかと思うと、穏やかな笑みを浮かべ、伯爵に尋ねた。
「新しい下僕ですか?美しい青年ですね」
月城は慌てて前を向く。
伯爵は月城を見て微笑み、説明する。
「…我が家の執事見習いの月城だ。四月から帝大にも通っているのだよ。給費生試験で首席だったから推薦入学だ」
縣は眼を見張る。
「それは素晴らしい!北白川伯爵家の将来は安泰ですね。このような才色兼備な執事見習いがおられるのですから…。実に羨ましいことです」
縣は慈愛に満ちた眼差しで月城を再び見つめる。
「ありがとう、礼也君。大学で会う事があったらよろしく頼むよ」
「もちろんです。伯爵」
二人は和やかに談笑しながら玄関ホールに入る。
梨央は伯爵と縣の間を、にこにこしながら弾むように歩く。
…完璧な方だ…。
月城は小さく溜息を吐く。
伯爵の後ろに影のように控えていた狭霧が、そんな月城に優しく微笑みかけ、艶な眼差しを残して伯爵の後を優雅な足取りで従って行った。