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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第3章 月光庭園
その日、梨央は朝から非常に機嫌が悪かった。
北白川伯爵は早朝から宮中参拝のために不在で、梨央一人の食卓である。
朝食のオートミールは一口しか食べない。
マッシュルームのオムレツも、胡桃と赤蕪のサラダも手をつけない。
大好きなはずの林檎ジュースも
「…いらない!」
とグラスを押しやり、隣りの席のピーターを抱っこして早々に椅子から降りようとする。

乳母のますみは慌てて梨央を椅子に戻そうと嗜める。
「梨央様!…まだお食事がお済みではございませんよ」
「…食べたくないの!」
梨央はますみの手から逃れようと、身体を捻る。
「全く召し上がっていらっしゃらないではありませんか!せめて半分は召し上らなくては…」
「嫌!いらないったらいらない!」
ついに梨央は癇癪を起こした。
地団駄を踏み、頬を膨らませる。
めったに我儘を言わない梨央が癇癪を起こすのは大変に珍しい。
ますみは、困り果てて、少し声色を変え厳しく叱ろうとしたその時…。

今まで、壁際に控えていた月城が静かに梨央に歩み寄り、膝をついて微笑みかけた。
「梨央様、月城と少しお外の空気を吸いにまいりましょうか…」
梨央は月城をちらりと見つめ、ふくれっ面のまま、しかし首は振らずに唇をぎゅっと引き結んだ。
月城は優しく微笑み、梨央に手を差し出す。
「では、バルコニーにまいりましょう」
梨央は黙って月城の手を小さな手で握りしめる。
ますみが当惑したように声をかける。
「月城さん、梨央様を甘やかされるのは困りますわ」
「ご心配なさらないでください。梨央様とお話して、どうしてご機嫌が悪いのか伺うだけですから…」
月城は穏やかに返事をした。
ますみはやれやれと言うようにため息を吐く。
「さあ、梨央様…」
月城は、梨央の手を引き、バルコニーへと続く扉を静かに開けた。


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