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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第3章 月光庭園
バルコニーから見る庭園は朝の光がきらきら輝き、爽やかな初夏の風が心地よく、頬を撫でる。
梨央は月城の手を握りしめたまま、少し表情を緩める。
月城は梨央をバルコニーに置かれた長椅子に座らせて、跪く。
「梨央様…なぜ、今朝はご機嫌がよろしくないのですか?」
梨央は俯く。
「…梨央様は理由もなく、我儘を仰ったりする方ではありません。なにか訳があるのでしょう?」
優しく梨央の顔を覗き込む月城。
梨央はゆっくり顔を上げる。
黒く澄んだ美しい瞳が月城を見つめる。
拗ねたような寂しいような色が浮かぶ。
「…だって…月城は今夜、お出かけするんでしょう?梨央を置いて…お父様と…」
「…梨央様…」
梨央は唇を歪ませ、その瞳に透明な涙を浮かべた。
「…梨央より夜会が良いの?…梨央は月城がいないと眠れないのに…」
梨央への愛しさが月城の胸一杯に溢れる。
「梨央様…私は梨央様が世界で一番大切です。
夜会は将来梨央様がご出席された時に、きちんと私がお仕えできるようにと、旦那様がご配慮下さったのです」
「…梨央が大きくなった時のため?」
「はい。梨央様が社交界デビューされた時に、どの姫君様方よりも一番美しく輝いていただけるように…月城はきちんと執事としての仕事を学んでまいります」
梨央はじっと月城を見つめていたがやがて小さく華奢な白い小指を差し出す。
「…約束。…早く帰ってくるって…約束して」
月城は微笑みながらそっと梨央の小指に自分の小指を絡ませる。
「…はい。夜会が終わったらすぐに帰宅します」
指切りげんまん…と梨央は唄うように呟き、そして恥ずかしそうに笑った。
月城は立ち上がり、再び手を差し伸べる。
「…さあ、梨央様。朝食の続きを召し上がりましょう。あんなに残されては、春さんが泣いてしまいます」
梨央は月城を見上げて健気に頷く。
「うん!ちゃんと食べる!」
月城はそんな梨央に優しく微笑み返す。
二人は初夏の朝の光がきらきら輝く中、ダイニングルームに戻っていった。
梨央は月城の手を握りしめたまま、少し表情を緩める。
月城は梨央をバルコニーに置かれた長椅子に座らせて、跪く。
「梨央様…なぜ、今朝はご機嫌がよろしくないのですか?」
梨央は俯く。
「…梨央様は理由もなく、我儘を仰ったりする方ではありません。なにか訳があるのでしょう?」
優しく梨央の顔を覗き込む月城。
梨央はゆっくり顔を上げる。
黒く澄んだ美しい瞳が月城を見つめる。
拗ねたような寂しいような色が浮かぶ。
「…だって…月城は今夜、お出かけするんでしょう?梨央を置いて…お父様と…」
「…梨央様…」
梨央は唇を歪ませ、その瞳に透明な涙を浮かべた。
「…梨央より夜会が良いの?…梨央は月城がいないと眠れないのに…」
梨央への愛しさが月城の胸一杯に溢れる。
「梨央様…私は梨央様が世界で一番大切です。
夜会は将来梨央様がご出席された時に、きちんと私がお仕えできるようにと、旦那様がご配慮下さったのです」
「…梨央が大きくなった時のため?」
「はい。梨央様が社交界デビューされた時に、どの姫君様方よりも一番美しく輝いていただけるように…月城はきちんと執事としての仕事を学んでまいります」
梨央はじっと月城を見つめていたがやがて小さく華奢な白い小指を差し出す。
「…約束。…早く帰ってくるって…約束して」
月城は微笑みながらそっと梨央の小指に自分の小指を絡ませる。
「…はい。夜会が終わったらすぐに帰宅します」
指切りげんまん…と梨央は唄うように呟き、そして恥ずかしそうに笑った。
月城は立ち上がり、再び手を差し伸べる。
「…さあ、梨央様。朝食の続きを召し上がりましょう。あんなに残されては、春さんが泣いてしまいます」
梨央は月城を見上げて健気に頷く。
「うん!ちゃんと食べる!」
月城はそんな梨央に優しく微笑み返す。
二人は初夏の朝の光がきらきら輝く中、ダイニングルームに戻っていった。