この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第3章 月光庭園
大広間に入ると既に夜会が華やかに開催されていた。
高い天井で輝くクリスタルのシャンデリアが、一際眩い。
正装の弦楽交響楽団が静かにモーツアルトを奏でている。
縣男爵家は初代…つまり礼也の祖父が九州の炭鉱を裸一貫から起こし、巨万の富を得たことが始まりと聞く。
それを礼也の父が軍需産業への参入に成功させ、その功績が認められ、男爵の爵位を賜ったという言わば新興貴族なのだが、招待された来賓の煌びやかさや人数は月城にとっては目を見張るばかりの華やかさで、圧倒されるばかりだ。

北白川伯爵は…と見ると、既に大勢の紳士や貴婦人達に取り囲まれて、一際華やかな人の輪の中心人物として収まっていた。
…旦那様は人気者でいらっしゃるのだな…。
月城はうっとりと、開け放たれたバルコニーから眺める。
そこに、一通り伯爵の世話を終えた狭霧がやって来る。
黒い燕尾服にホワイトタイの狭霧は貴族の青年のような華やかさと気品に満ちている。

従者は主人のお下がりの燕尾服を着る。
それ故、服装の見た目が流行遅れで従者と分かるらしいのだが、伯爵は1、2度袖を通したものをすぐに狭霧に払い下げるため、狭霧は最新流行の美しい服装を常にしているのだ。
…もっとも月城の燕尾服も同様なので、さっきから若い貴族の令嬢がちらちらと月城に秋波を送ってくる。

「どう?初めての夜会は」
情感漂う笑みを浮かべ、狭霧が話しかける。
「はい。…あまりに華やかで、豪華で…御伽の国に来ているようです…」
狭霧は好意的な笑いを漏らす。
「…今はまだ梨央様がお小さいから、北白川家で夜会や舞踏会が開かれることもないが、梨央様がお年頃になられたらその機会もたくさんあるに違いないからね。しっかり見て勉強しておくと良いよ」
「はい!」
月城は頷く。

弦楽交響楽団が緩やかなワルツを奏で始めた。
舞踏会の始まりだ。
北白川伯爵と同じくらいに華やかな令嬢や貴婦人の輪の中にいた縣が、1人のうら若き令嬢の手を取り、広間の中央に進む。
そして縣は優雅に一礼し、令嬢の手を取り洗練された仕草で令嬢をリードし、踊り始めた。
頬を染めて、縣を見つめる令嬢を優しく紳士らしくリードする縣は、月城から見ても美しく気品にあふれた素晴らしい青年貴族ぶりだ。
…女性なら誰でも縣様をお好きになるだろうな…。
見惚れながら考える。
…梨央様も…かな…。
月城の胸が小さく疼く。

/233ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ