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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第3章 月光庭園
「…縣様は素晴らしい貴公子だね。…お美しく男らしく賢く…大金持ちの御曹司なのにひけらかさず、おおらかでお優しく…」
まるで月城の心を読んでいるかのように狭霧が、踊る縣を眺めながら囁く。
「…はい。…本当に、この上なく素晴らしい方です。…縣様を梨央様の後見人にされた、旦那様のお目は確かです…」
噛みしめるように月城は答える。
狭霧はゆっくりと月城を見る。
「…縣様はもう既に梨央様に心を奪われておられる」
「…はい…」
…そうだろう。縣の梨央を見つめる眼差しを見れば分かる。
あれは恋する者の目だ。
「…梨央様もお年頃になれば、縣様に恋するかもしれないね」
月城は狭霧の真意を図りかねて、その美しいが何を考えているかわからない瞳を見つめ返す。
「…当然です…縣様のような方に恋をされないはずがない…」
ふいに狭霧がふっと優しい眼差しで、月城に笑いかけた。
「…例えそうだとしても、君に対する梨央様のお気持ちは変わらないさ」
「…え?」
「…梨央様にとって君は唯一無二の騎士だ。それは誰とも替えが効かないのさ。恋のお相手は一人とは限らない。…けれど、梨央様をお護りする騎士は君一人なのだから…」
「…狭霧さん…!」
「…幸せなことだ」
狭霧が月城にウィンクをする。
…と、その時、陽気な声をあげながら1人の華やかな貴婦人が狭霧に向って歩いて来た。
「狭霧じゃない!…お久しぶりね。北白川伯爵が帰国中にしか会えないから貴重な再会だわね」
狭霧はにこやかに貴婦人に笑いかけ、恭しく手を取りキスをする。
「間宮子爵夫人、ご機嫌いかがでいらっしゃいますか。…相変わらず、大輪の薔薇のように美しい…!」
子爵夫人は甲高い声で笑い転げる。
…華やかな美人だが、少しばかり酔っているようだ…。
「本当に口が上手いんだから。…貴方は相変わらず艶聞家のようね。…ヨーロッパの社交界でも狭霧を知らない日本人はモグリと言われるらしいじゃない?」
しなだれかかる夫人を狭霧は陽気に宥める。
「…夫人には敵いませんよ。…間宮子爵は大変だ。このように妖艶な夫人がいらっしゃると気が気ではありませんね」
夫人はツンとわざとそっぽを向く。
そして狭霧の隣にいて、この状況を息を飲んで見守る月城に気付くと、声を和らげた。
「あらまあ!なんて美しい下僕なの!伯爵の新しい下僕?」
「新しく入った執事見習いです。月城君、ご挨拶を…」
まるで月城の心を読んでいるかのように狭霧が、踊る縣を眺めながら囁く。
「…はい。…本当に、この上なく素晴らしい方です。…縣様を梨央様の後見人にされた、旦那様のお目は確かです…」
噛みしめるように月城は答える。
狭霧はゆっくりと月城を見る。
「…縣様はもう既に梨央様に心を奪われておられる」
「…はい…」
…そうだろう。縣の梨央を見つめる眼差しを見れば分かる。
あれは恋する者の目だ。
「…梨央様もお年頃になれば、縣様に恋するかもしれないね」
月城は狭霧の真意を図りかねて、その美しいが何を考えているかわからない瞳を見つめ返す。
「…当然です…縣様のような方に恋をされないはずがない…」
ふいに狭霧がふっと優しい眼差しで、月城に笑いかけた。
「…例えそうだとしても、君に対する梨央様のお気持ちは変わらないさ」
「…え?」
「…梨央様にとって君は唯一無二の騎士だ。それは誰とも替えが効かないのさ。恋のお相手は一人とは限らない。…けれど、梨央様をお護りする騎士は君一人なのだから…」
「…狭霧さん…!」
「…幸せなことだ」
狭霧が月城にウィンクをする。
…と、その時、陽気な声をあげながら1人の華やかな貴婦人が狭霧に向って歩いて来た。
「狭霧じゃない!…お久しぶりね。北白川伯爵が帰国中にしか会えないから貴重な再会だわね」
狭霧はにこやかに貴婦人に笑いかけ、恭しく手を取りキスをする。
「間宮子爵夫人、ご機嫌いかがでいらっしゃいますか。…相変わらず、大輪の薔薇のように美しい…!」
子爵夫人は甲高い声で笑い転げる。
…華やかな美人だが、少しばかり酔っているようだ…。
「本当に口が上手いんだから。…貴方は相変わらず艶聞家のようね。…ヨーロッパの社交界でも狭霧を知らない日本人はモグリと言われるらしいじゃない?」
しなだれかかる夫人を狭霧は陽気に宥める。
「…夫人には敵いませんよ。…間宮子爵は大変だ。このように妖艶な夫人がいらっしゃると気が気ではありませんね」
夫人はツンとわざとそっぽを向く。
そして狭霧の隣にいて、この状況を息を飲んで見守る月城に気付くと、声を和らげた。
「あらまあ!なんて美しい下僕なの!伯爵の新しい下僕?」
「新しく入った執事見習いです。月城君、ご挨拶を…」