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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第3章 月光庭園
翌日から、月城は周りに気づかれない程度に梨央から距離を置き始めた。
朝食の給仕を外してもらい、階下で他の雑用をするか、図書室で伯爵の調べ物の手伝いをする。
下げられた朝食の皿を運びながら大が戸惑った顔をして、月城に話しかける。
「おい、梨央様にどうして月城は朝食の給仕に来ないんだ?て聞かれたぞ。…どうしたんだよ」
「…すみません…」
「いいけどさ、別に。…でも梨央様、寂しそうだったぞ。…すっかり食欲も失くされてさ。見ろよ、こんなに残されている」
皿にはほとんど手つかずのエッグベネディクトとポークビーンズ…。
月城の胸は痛む。
「お前は梨央様のお気に入りだからな。ますみさんが途方に暮れていたよ」
「…私ばかりに懐かれるのは梨央様にとってよろしいことではないと思いまして…」
小さな声で答える月城の背後から、威厳に満ちた声が響いてきた。
「その通りだ。月城。大、旦那様への郵便物は?」
「ま、まだです!橘さん」
「早く行け」
「はい!」
大は慌てて階段を駆け上る。
大が置いていった皿を器用に片す月城に、執事の橘は噛み締めるように続ける。
「…梨央様はいずれこの伯爵家を継がれるお方だ。…人見知りも少しずつ直していただかなくてはならない」
「…はい。橘さん」
「お前が執事になった時に、執事に頼りきりの当主様では威厳が保てなくなる。…梨央様を突き放すのも時には愛情なのだ」
月城は静かに橘を見上げ、寂しく微笑む。
「はい。…承知しております」
橘はその表情を見て、一瞬何かを言いたげな顔をしたが、優しい仕草で月城の肩を叩き
「…お前は賢く思慮深い人間だ。…旦那様の目に狂いはなかった」
と呟き、厨房の支度部屋を出て行った。
「…はい…橘さん…」
月城は橘の背中にそう答え、梨央への思いを振り払うように頭を振り、皿を厨房に運んだ。
朝食の給仕を外してもらい、階下で他の雑用をするか、図書室で伯爵の調べ物の手伝いをする。
下げられた朝食の皿を運びながら大が戸惑った顔をして、月城に話しかける。
「おい、梨央様にどうして月城は朝食の給仕に来ないんだ?て聞かれたぞ。…どうしたんだよ」
「…すみません…」
「いいけどさ、別に。…でも梨央様、寂しそうだったぞ。…すっかり食欲も失くされてさ。見ろよ、こんなに残されている」
皿にはほとんど手つかずのエッグベネディクトとポークビーンズ…。
月城の胸は痛む。
「お前は梨央様のお気に入りだからな。ますみさんが途方に暮れていたよ」
「…私ばかりに懐かれるのは梨央様にとってよろしいことではないと思いまして…」
小さな声で答える月城の背後から、威厳に満ちた声が響いてきた。
「その通りだ。月城。大、旦那様への郵便物は?」
「ま、まだです!橘さん」
「早く行け」
「はい!」
大は慌てて階段を駆け上る。
大が置いていった皿を器用に片す月城に、執事の橘は噛み締めるように続ける。
「…梨央様はいずれこの伯爵家を継がれるお方だ。…人見知りも少しずつ直していただかなくてはならない」
「…はい。橘さん」
「お前が執事になった時に、執事に頼りきりの当主様では威厳が保てなくなる。…梨央様を突き放すのも時には愛情なのだ」
月城は静かに橘を見上げ、寂しく微笑む。
「はい。…承知しております」
橘はその表情を見て、一瞬何かを言いたげな顔をしたが、優しい仕草で月城の肩を叩き
「…お前は賢く思慮深い人間だ。…旦那様の目に狂いはなかった」
と呟き、厨房の支度部屋を出て行った。
「…はい…橘さん…」
月城は橘の背中にそう答え、梨央への思いを振り払うように頭を振り、皿を厨房に運んだ。