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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第3章 月光庭園
月城が大学から帰宅すると、使用人の出入り口玄関にクリーム色のワンピースを着た梨央が座っているのが見えた。
月城が驚き立ち止まっていると、梨央は月城を見つけ、一目散に走ってきた。
「月城!お帰りなさい!」
梨央は満面の笑みを月城に向ける。
月城はその笑顔に胸がきゅんと締め付けられながらも、至極冷静さを装い、問いかけた。
「梨央様。このようなところで何をなさっておいでなのですか?」
「月城を待っていたの。最近、ちっとも遊んでくれないんだもの。…給仕にも現れないし…つまらない…」
梨央の瞳が憂いを帯びた色に染まる。
「…梨央様…」
月城は思わず、梨央の髪を撫でようと手を伸ばし、その手をはっと引っ込めた。
「梨央様。ここは使用人の玄関です。お嬢様がおいでになるところではありません。さあ、お戻りください」
心を鬼にして、梨央を嗜める。
梨央の瞳に見る見る内に涙が溢れる。
「…月城…。どうして?…梨央が嫌いになったの?」
「梨央様…」
…嫌いになる訳がない!
今だって、梨央様を抱きしめたい衝動にかられるのを抑えるのに必死なのに!
「…梨央様、梨央様はもうすぐ7歳におなりです。…いつまでも私などにかまけていてはなりません」
「月城!」
「お遊び相手でしたら梨央様に相応しいお相手がいらっしゃるはずです」
「嫌!梨央は月城がいいの!月城が好きなんだもの!」
梨央が月城の腰にしがみつく。
「梨央様…」
「…月城がいいの。月城だって梨央のそばにずっといるって言ったじゃない!月城は梨央の騎士なんでしょう?」
「…梨央様…」
月城は身を切られるような思いで梨央を突き放す。
「…梨央様の騎士は他にいらっしゃいます。…私など分不相応です」
「月城‼︎」
「さあ、お屋敷にお戻りを…」
梨央に背を向けたその時、中庭の方から狭霧が現れた。
優しく明るい声で梨央に話しかけ、手を差し伸べる。
「梨央様。旦那様が間も無くお戻りになられます。狭霧とご一緒に居間でお待ちしましょう」
梨央は涙を浮かべながら素直に狭霧の腕に抱かれた。
「さあ、参りましょう。今日はどんなお土産をお持ち帰りになられるでしょうね」
穏やかにあやしながら、月城を見やる。
月城は無言で一礼する。
狭霧は目で頷き、そのまま梨央を抱きながら屋敷の方へ消えていった。
月城はため息をつき、いつまでも二人の姿を見つめ続けていた。
月城が驚き立ち止まっていると、梨央は月城を見つけ、一目散に走ってきた。
「月城!お帰りなさい!」
梨央は満面の笑みを月城に向ける。
月城はその笑顔に胸がきゅんと締め付けられながらも、至極冷静さを装い、問いかけた。
「梨央様。このようなところで何をなさっておいでなのですか?」
「月城を待っていたの。最近、ちっとも遊んでくれないんだもの。…給仕にも現れないし…つまらない…」
梨央の瞳が憂いを帯びた色に染まる。
「…梨央様…」
月城は思わず、梨央の髪を撫でようと手を伸ばし、その手をはっと引っ込めた。
「梨央様。ここは使用人の玄関です。お嬢様がおいでになるところではありません。さあ、お戻りください」
心を鬼にして、梨央を嗜める。
梨央の瞳に見る見る内に涙が溢れる。
「…月城…。どうして?…梨央が嫌いになったの?」
「梨央様…」
…嫌いになる訳がない!
今だって、梨央様を抱きしめたい衝動にかられるのを抑えるのに必死なのに!
「…梨央様、梨央様はもうすぐ7歳におなりです。…いつまでも私などにかまけていてはなりません」
「月城!」
「お遊び相手でしたら梨央様に相応しいお相手がいらっしゃるはずです」
「嫌!梨央は月城がいいの!月城が好きなんだもの!」
梨央が月城の腰にしがみつく。
「梨央様…」
「…月城がいいの。月城だって梨央のそばにずっといるって言ったじゃない!月城は梨央の騎士なんでしょう?」
「…梨央様…」
月城は身を切られるような思いで梨央を突き放す。
「…梨央様の騎士は他にいらっしゃいます。…私など分不相応です」
「月城‼︎」
「さあ、お屋敷にお戻りを…」
梨央に背を向けたその時、中庭の方から狭霧が現れた。
優しく明るい声で梨央に話しかけ、手を差し伸べる。
「梨央様。旦那様が間も無くお戻りになられます。狭霧とご一緒に居間でお待ちしましょう」
梨央は涙を浮かべながら素直に狭霧の腕に抱かれた。
「さあ、参りましょう。今日はどんなお土産をお持ち帰りになられるでしょうね」
穏やかにあやしながら、月城を見やる。
月城は無言で一礼する。
狭霧は目で頷き、そのまま梨央を抱きながら屋敷の方へ消えていった。
月城はため息をつき、いつまでも二人の姿を見つめ続けていた。