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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第3章 月光庭園
秋も深まった頃、伯爵のロンドンに戻る日が決まった。
梨央は一日中伯爵の側を片時も離れないほど、寂しがり始めた。
伯爵もそんな梨央が愛おしくてならないように、全ての予定をキャンセルし、梨央と外出したり、温室や庭で遊んだり、時を惜しむかのように過ごした。
「お父様、ロンドンに行かれては嫌よ。ずっと梨央の側にいて」
庭の東屋で、伯爵の膝に抱かれながら梨央はべそをかく。
伯爵は珍しくその美しく華やかな顔に悲しげな色を浮かべ、梨央を強く抱きしめた。
「…梨央…私も梨央を離したくないよ。…お前をロンドンに連れて行きたい」
「連れて行って、お父様!」
梨央は伯爵の首筋に腕を回し、しがみつく。
「連れて行きたいが、ロンドンではこちら以上に私は多忙だ。お前を見知らぬ異国の地にずっと一人ぼっちにさせてしまう。身体の弱いお前にロンドンの湿気や空気も好ましくない…ここならお前が生まれた時からずっと側にいる者達が護ってくれる。橘や、ますみや、礼也君、月城…。梨央、ここでいい子で私の帰りを待っていておくれ。お前を誰よりも愛しているよ…私の可愛いお姫様…」
伯爵は優しく言い聞かすように梨央に話しかけ、宝物に触れるように梨央の美しい黒髪を愛おし気に撫でた。
「お父様…!でも…梨央は寂しい…寂しい…」
梨央は泣くまいと我慢しながらも、伯爵の胸に顔を埋め、いつまでも伯爵から離れようとはしなかった。
その様子を少し離れたところから月城は見守っていた。
…梨央様…。どれほどお寂しいことだろう…。
お可哀想に…。
だけど…
僕には何も出来ない!
梨央様に邪な気持ちを持ってしまう僕は、梨央様をお慰めすることすらできない!
…なんて情けない…どうしようもない人間なんだ!
月城は唇を噛み締め、そっと庭を後にした。
梨央は一日中伯爵の側を片時も離れないほど、寂しがり始めた。
伯爵もそんな梨央が愛おしくてならないように、全ての予定をキャンセルし、梨央と外出したり、温室や庭で遊んだり、時を惜しむかのように過ごした。
「お父様、ロンドンに行かれては嫌よ。ずっと梨央の側にいて」
庭の東屋で、伯爵の膝に抱かれながら梨央はべそをかく。
伯爵は珍しくその美しく華やかな顔に悲しげな色を浮かべ、梨央を強く抱きしめた。
「…梨央…私も梨央を離したくないよ。…お前をロンドンに連れて行きたい」
「連れて行って、お父様!」
梨央は伯爵の首筋に腕を回し、しがみつく。
「連れて行きたいが、ロンドンではこちら以上に私は多忙だ。お前を見知らぬ異国の地にずっと一人ぼっちにさせてしまう。身体の弱いお前にロンドンの湿気や空気も好ましくない…ここならお前が生まれた時からずっと側にいる者達が護ってくれる。橘や、ますみや、礼也君、月城…。梨央、ここでいい子で私の帰りを待っていておくれ。お前を誰よりも愛しているよ…私の可愛いお姫様…」
伯爵は優しく言い聞かすように梨央に話しかけ、宝物に触れるように梨央の美しい黒髪を愛おし気に撫でた。
「お父様…!でも…梨央は寂しい…寂しい…」
梨央は泣くまいと我慢しながらも、伯爵の胸に顔を埋め、いつまでも伯爵から離れようとはしなかった。
その様子を少し離れたところから月城は見守っていた。
…梨央様…。どれほどお寂しいことだろう…。
お可哀想に…。
だけど…
僕には何も出来ない!
梨央様に邪な気持ちを持ってしまう僕は、梨央様をお慰めすることすらできない!
…なんて情けない…どうしようもない人間なんだ!
月城は唇を噛み締め、そっと庭を後にした。