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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第1章 天使の手のひら
「…さあ、着いた。ここがお屋敷だよ」
運転手の声に我にかえる。
窓ガラスを見上げるとそこには…。
…ここはどこだ?
僕は西洋のお城に来たのか?
イギリスやフランスの童話に出てきたお姫様が住むお城…。
本の中でしか見たことがないお城が目の前にそびえている。
月城は呆然としながら、車を降りた。
「このお屋敷を初めて見た人はみんなあんたみたいな顔をするよ。…さあ、旦那様にご挨拶しておいで。私は車を回してくる」
運転手はそう笑って車を出した。
月城は緊張した面持ちで、重厚な玄関に向かう。
車の音を聞きつけたのか、玄関の扉が開き中から黒い制服を着た大柄で恰幅のよい人品卑しからぬ老紳士が現れた。
きちんと撫でつけられた銀髪、品位に満ちた容貌…
…旦那様ではもちろんないが、かと言って使用人にしては余りに威厳がありすぎる…。
…どういう人なのだろう…
老紳士は月城に近づき、静かに口を開いた。
「…月城君だね?」
「はい…」
「この家の執事の橘だ。よろしく」
差し出された手を月城は慌てて握りしめる。
ごつごつしているが温かい大きな手…。
「月城です。これからお世話になります」
橘はじっと月城を見つめた。
「…旦那様好みの顔だな」
「…?」
橘は口元に笑みを浮かべ、月城を中に招き入れた。
「さあ、入りなさい。旦那様がお待ちかねだ」
重厚な扉が開かれる。
つるつるする綺麗な石で出来た床を踏みしめて中に入る。
…ここは…やはり外国なのか?
月城は眼を見張る。
美しく装飾された高い天井、壁に飾られた数々の名画、きらきら輝くクリスタルのシャンデリア…。
月城が、言葉を失い周りを見渡していると、奥の大階段の上から聴き覚えのある美しい声が聴こえた。
「…やあ、無事に着いたか。待っていたよ。月城」
はっと声の主を振り返る。
北白川伯爵が軽やかな足取りで階段を降りて来る。
…その腕の中には真っ白なドレスを着た小さな女の子が抱かれていた。
月城はその女の子の顔を見た途端、今まで感じた事がない胸の高鳴りと、ときめきに思わず手を握りしめた。
…何て…何て美しい少女なんだ…!
艶やかな長い黒髪、雪より白い肌、濡れたような漆黒の瞳、睫毛が濃く長く、鼻はすんなりと整い、その唇はまるで花の蕾のように可憐であった…。
お伽話の絵本でしか見た事がないような美しい少女…
月城はうっとりと見つめ続けた。
運転手の声に我にかえる。
窓ガラスを見上げるとそこには…。
…ここはどこだ?
僕は西洋のお城に来たのか?
イギリスやフランスの童話に出てきたお姫様が住むお城…。
本の中でしか見たことがないお城が目の前にそびえている。
月城は呆然としながら、車を降りた。
「このお屋敷を初めて見た人はみんなあんたみたいな顔をするよ。…さあ、旦那様にご挨拶しておいで。私は車を回してくる」
運転手はそう笑って車を出した。
月城は緊張した面持ちで、重厚な玄関に向かう。
車の音を聞きつけたのか、玄関の扉が開き中から黒い制服を着た大柄で恰幅のよい人品卑しからぬ老紳士が現れた。
きちんと撫でつけられた銀髪、品位に満ちた容貌…
…旦那様ではもちろんないが、かと言って使用人にしては余りに威厳がありすぎる…。
…どういう人なのだろう…
老紳士は月城に近づき、静かに口を開いた。
「…月城君だね?」
「はい…」
「この家の執事の橘だ。よろしく」
差し出された手を月城は慌てて握りしめる。
ごつごつしているが温かい大きな手…。
「月城です。これからお世話になります」
橘はじっと月城を見つめた。
「…旦那様好みの顔だな」
「…?」
橘は口元に笑みを浮かべ、月城を中に招き入れた。
「さあ、入りなさい。旦那様がお待ちかねだ」
重厚な扉が開かれる。
つるつるする綺麗な石で出来た床を踏みしめて中に入る。
…ここは…やはり外国なのか?
月城は眼を見張る。
美しく装飾された高い天井、壁に飾られた数々の名画、きらきら輝くクリスタルのシャンデリア…。
月城が、言葉を失い周りを見渡していると、奥の大階段の上から聴き覚えのある美しい声が聴こえた。
「…やあ、無事に着いたか。待っていたよ。月城」
はっと声の主を振り返る。
北白川伯爵が軽やかな足取りで階段を降りて来る。
…その腕の中には真っ白なドレスを着た小さな女の子が抱かれていた。
月城はその女の子の顔を見た途端、今まで感じた事がない胸の高鳴りと、ときめきに思わず手を握りしめた。
…何て…何て美しい少女なんだ…!
艶やかな長い黒髪、雪より白い肌、濡れたような漆黒の瞳、睫毛が濃く長く、鼻はすんなりと整い、その唇はまるで花の蕾のように可憐であった…。
お伽話の絵本でしか見た事がないような美しい少女…
月城はうっとりと見つめ続けた。