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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第1章 天使の手のひら
北白川伯爵は月城の前まで来ると、優しく魅惑的な微笑を浮かべ、労をねぎらう。
「道中長くて疲れただろう」
「…い、いえ…大丈夫です…」
疲れよりなにより、伯爵の腕の中の宝石のような女の子が気になって仕方がない。
月城は無礼を承知で、少女を至近距離で見つめる。
人形のように華奢で美しいその少女は月城の無遠慮な眼差しを受け、恥ずかしそうに眼をそらし、伯爵の上質そうなジャケットの胸に顔を埋めてしまった。
伯爵があやすように少女に話しかける。
「…お前の騎士が到着したよ、梨央…」
…梨央…りお…梨央というのか…。
音楽のように綺麗な名前だ。
「…騎士?…梨央の?」
梨央と呼ばれた少女は、そっと顔を上げ伯爵を見つめる。
…美しい女の子は声も美しいんだな…。
まるで金糸雀だ…。
伯爵はさながら恋人に語りかけるように甘く梨央に囁く。
「ああ、そうだ。梨央だけの騎士だよ」
そして月城に紹介する。
「…娘の梨央だ。歳は6歳。…君より一回り下だな」
…6歳!弟と同い年だ。
月城は今朝方、寂しさをこらえながらホームで月城を見送っていた弟の顔を思い出した。
粗末な着物、煤けた顔、痩せこけた手足…その足には履き物すらなかった…。
梨央の綺麗な脚には白い絹の靴下と、家の中だと言うのに上質な革の華奢な靴が履かされていた。
…同じ6歳と思えない。
月城は弟を思い、切なくなる。
「…本当に本当に梨央だけの騎士?」
梨央は可愛らしい声で念を押す。
…僕の話をしているのかな…?
「そうだよ、可愛い私のお姫様。橘は私の執事。…そしてこの月城はお前だけの執事だ…未来のね」
伯爵はそう悪戯っぽく月城に目配せし、腕の中の梨央の頬に口付けをした。
月城の胸が甘く疼く。
…お前だけの執事…。
この少女の…?僕が?
…そんな凄い人になれるのだろうか…。
月城の混乱を他所に、梨央は花が咲いたように笑った。
「嬉しい!お父様!だいすき!」
梨央は声を上げて、伯爵に抱きつく。
「愛しい梨央。では私にキスをしておくれ」
梨央はその可愛らしい小さな紅い唇で、伯爵の頬に愛らしく口付けをした。
伯爵は梨央の艶やかな髪を愛おしげに撫でながら月城に微笑む。
「…月城はお父様がようやく探し当てた逸材だ。…賢く思慮深く、忍耐強い…そして何より素晴らしく美しい…。美しい姫君に仕える騎士は美しい若者でなくてならないからな…」
「道中長くて疲れただろう」
「…い、いえ…大丈夫です…」
疲れよりなにより、伯爵の腕の中の宝石のような女の子が気になって仕方がない。
月城は無礼を承知で、少女を至近距離で見つめる。
人形のように華奢で美しいその少女は月城の無遠慮な眼差しを受け、恥ずかしそうに眼をそらし、伯爵の上質そうなジャケットの胸に顔を埋めてしまった。
伯爵があやすように少女に話しかける。
「…お前の騎士が到着したよ、梨央…」
…梨央…りお…梨央というのか…。
音楽のように綺麗な名前だ。
「…騎士?…梨央の?」
梨央と呼ばれた少女は、そっと顔を上げ伯爵を見つめる。
…美しい女の子は声も美しいんだな…。
まるで金糸雀だ…。
伯爵はさながら恋人に語りかけるように甘く梨央に囁く。
「ああ、そうだ。梨央だけの騎士だよ」
そして月城に紹介する。
「…娘の梨央だ。歳は6歳。…君より一回り下だな」
…6歳!弟と同い年だ。
月城は今朝方、寂しさをこらえながらホームで月城を見送っていた弟の顔を思い出した。
粗末な着物、煤けた顔、痩せこけた手足…その足には履き物すらなかった…。
梨央の綺麗な脚には白い絹の靴下と、家の中だと言うのに上質な革の華奢な靴が履かされていた。
…同じ6歳と思えない。
月城は弟を思い、切なくなる。
「…本当に本当に梨央だけの騎士?」
梨央は可愛らしい声で念を押す。
…僕の話をしているのかな…?
「そうだよ、可愛い私のお姫様。橘は私の執事。…そしてこの月城はお前だけの執事だ…未来のね」
伯爵はそう悪戯っぽく月城に目配せし、腕の中の梨央の頬に口付けをした。
月城の胸が甘く疼く。
…お前だけの執事…。
この少女の…?僕が?
…そんな凄い人になれるのだろうか…。
月城の混乱を他所に、梨央は花が咲いたように笑った。
「嬉しい!お父様!だいすき!」
梨央は声を上げて、伯爵に抱きつく。
「愛しい梨央。では私にキスをしておくれ」
梨央はその可愛らしい小さな紅い唇で、伯爵の頬に愛らしく口付けをした。
伯爵は梨央の艶やかな髪を愛おしげに撫でながら月城に微笑む。
「…月城はお父様がようやく探し当てた逸材だ。…賢く思慮深く、忍耐強い…そして何より素晴らしく美しい…。美しい姫君に仕える騎士は美しい若者でなくてならないからな…」