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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第3章 月光庭園
「…僕は執事がご主人様に恋をしても構わないと思う。君の愛が梨央様を不幸にするなんて思わない」
「…狭霧さん…」
狭霧は月城の眼鏡越しの瞳を見つめて、言い聞かせるように語りかける。
「橘さんは真面目で実直な人だからね。執事がご主人に忠誠以外の感情を持つことはあり得ないと思っているんだろう。…でも執事や従者も人間だ。ご主人様に対して、どうしようもない抗えない感情を持ってしまうこともあるだろう。それが悪いこととは僕は思わない」
「…でも…僕が梨央様を愛しても、決して結ばれることはない恋です…」
苦しげに月城は俯く。
「…君は梨央様と結ばれたくて、梨央様を愛しているの?」
「違います!ただただ梨央様が好きなんです!可愛いくて可愛くて…仕方がないのです」
狭霧は優しく笑う。
「そうだろう?君は梨央様と例え結ばれることはなくても、梨央様を愛しているんだよ。そしてそれは決して不幸なことではない。生涯、愛する方の側に誰よりもいられる…こんなに幸せなことはない。君には恋を愛に変えることができるはずだ」
「…恋を愛に…?」
「見返りを求めずに、ただ梨央様を愛することだ…君ならきっとできる…なにしろあの旦那様が選ばれた人なのだから」
…恋を愛に変える…。
見返りを求めない愛…。
できるのだろうか…僕に…。
月城は自問自答する。
考え込む月城の耳に狭霧の美しい声が響く。
「…恋人を亡くして…自暴自棄になっていた僕を救ってくださったのは旦那様だった…」
月城ははっとして狭霧を見上げる。
月を見つめながら独り言のように呟く狭霧の横顔は壮絶なまでに美しく…穏やかだった。
「…絶望の淵を彷徨い、死んでしまおうとしていた僕を拾い上げて、そして救ってくださったのは旦那様だった…旦那様に救われた僕は心に誓った。…この方の為ならば何でもしよう。この方をお護りする為なら命をも捧げよう…と」
「…狭霧さん…」
狭霧の瞳には温かい色が灯っていた。
「…そんな方に巡り会えた僕は幸せだ。…例え、旦那様と結ばれることがなくても…」
「狭霧さん…」
「…愛する方に巡り会えたことだけで、僕らは幸せなんだよ。それを自分で大きな愛に変えて、ご主人様に仕えるんだ。ご主人様にもっとお幸せになっていただく為にね…」
狭霧が月城の髪を優しく撫でる。
狭霧の言葉はまるで愛の呪文のようだ。
月城はその美しい言葉を噛み締める。
「…狭霧さん…」
狭霧は月城の眼鏡越しの瞳を見つめて、言い聞かせるように語りかける。
「橘さんは真面目で実直な人だからね。執事がご主人に忠誠以外の感情を持つことはあり得ないと思っているんだろう。…でも執事や従者も人間だ。ご主人様に対して、どうしようもない抗えない感情を持ってしまうこともあるだろう。それが悪いこととは僕は思わない」
「…でも…僕が梨央様を愛しても、決して結ばれることはない恋です…」
苦しげに月城は俯く。
「…君は梨央様と結ばれたくて、梨央様を愛しているの?」
「違います!ただただ梨央様が好きなんです!可愛いくて可愛くて…仕方がないのです」
狭霧は優しく笑う。
「そうだろう?君は梨央様と例え結ばれることはなくても、梨央様を愛しているんだよ。そしてそれは決して不幸なことではない。生涯、愛する方の側に誰よりもいられる…こんなに幸せなことはない。君には恋を愛に変えることができるはずだ」
「…恋を愛に…?」
「見返りを求めずに、ただ梨央様を愛することだ…君ならきっとできる…なにしろあの旦那様が選ばれた人なのだから」
…恋を愛に変える…。
見返りを求めない愛…。
できるのだろうか…僕に…。
月城は自問自答する。
考え込む月城の耳に狭霧の美しい声が響く。
「…恋人を亡くして…自暴自棄になっていた僕を救ってくださったのは旦那様だった…」
月城ははっとして狭霧を見上げる。
月を見つめながら独り言のように呟く狭霧の横顔は壮絶なまでに美しく…穏やかだった。
「…絶望の淵を彷徨い、死んでしまおうとしていた僕を拾い上げて、そして救ってくださったのは旦那様だった…旦那様に救われた僕は心に誓った。…この方の為ならば何でもしよう。この方をお護りする為なら命をも捧げよう…と」
「…狭霧さん…」
狭霧の瞳には温かい色が灯っていた。
「…そんな方に巡り会えた僕は幸せだ。…例え、旦那様と結ばれることがなくても…」
「狭霧さん…」
「…愛する方に巡り会えたことだけで、僕らは幸せなんだよ。それを自分で大きな愛に変えて、ご主人様に仕えるんだ。ご主人様にもっとお幸せになっていただく為にね…」
狭霧が月城の髪を優しく撫でる。
狭霧の言葉はまるで愛の呪文のようだ。
月城はその美しい言葉を噛み締める。