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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第4章 聖なる贈り物
イブの夜も更けた頃…。
梨央はまだ寝台の中に潜り込み、窓の外の雪をぼんやり眺めていた。
白い雪と漆黒の夜空…。
それを照らすのは梨央の部屋のクリスマスツリーの蝋燭の灯りだ。
夢のように美しい光景…。
…本当なら今頃、お父様とご一緒に初雪を見ることができたのに…。
そう思うと新しい涙が滲み、再び寂しい気持ちが蘇る。
…お父様…。
梨央は父、伯爵が誰よりも好きだった。
絵本に出て来る美しい王子様のような顔、優しい声、梨央を抱き上げ、愛しげに撫でてくれる温かな手…。
伯爵の胸元のシャツからはいつも薫り高い外国のトワレの薫りが漂い、梨央はその薫りを嗅ぐのが大好きだった。
梨央を誰よりも愛し、慈しみ深く見つめてくれる最愛の人…。
大好きなお父様に大好きなクリスマスイブにお会い出来ないなんて…!
梨央は昨日からどうしようもないほどの絶望感に襲われていた。
…皆が心配してくれるのはよくわかっていた。
誰が悪いのでもない。
嘆いても仕方ないことも…。
でも…寂しい…。
悲しい…。お父様にお会い出来ないのが…。

ふと、梨央の胸に月城の悲しげに梨央を見つめる顔が思い浮かんだ。
…月城…
月城のあんなに悲しそうな顔、初めて見た…。
…月城の胸の中は、お父様と同じくらいに温かくて、そして清潔なシャボンの薫りがした…。

…月城に…謝らなきゃ…
大嫌い…て言っちゃったから…。
…でも…もう少し…元気が出てから…。
梨央はもう眠ってしまおうと、ブランケットを頭までかぶり、目を閉じた。
…お父様がお帰りになるまで…ずっと眠り続けたい…。

…と、その時…。
廊下から、陽気な鈴の音と共にクラッカーの弾ける音が聞こえた。

梨央ははっとして、上半身を起こす。
扉が勢いよく開かれ、部屋の中に入って来たのは…
赤い帽子に赤い上下のダボダボの服を着たサンタクロースだった…!
サンタクロースは大きな麻袋を背負い、陽気に笑いながら梨央に近づく。
「メリークリスマス!メリークリスマス!やあやあ、良い子はどこかな?…おお!何と可愛い女の子だ!良い子にはサンタクロースからのプレゼントがあるよ!」
梨央はサンタクロースをじっと固唾を呑んで見つめていたが、ふいに弾けるように笑い出した。
「フフフ…あははは!おかしい…!おなか…いたい…あははは!」
寝台を転げ回り涙を流しながら笑い転げ、それは止まることがなかった。
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