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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第5章 Fly me to the Moon
別荘での光の部屋は梨央の隣…しかも中で行き来出来る扉付きの部屋であった。
光を案内しながら、梨央は嬉しそうに見上げる。
「ここなら私がお会いしたい時にすぐに光お姉様のところに伺えるわ」
無邪気な笑顔が本当に愛らしい。
「梨央さんならいつでも歓迎よ」
笑いながら抱き締めると、梨央は光の腕の中で恥じらうようにきゅっと身体を縮めた。
…本当に、可愛いんだから…。
相変わらず無垢で初心で汚れなくて…。
しかも、見惚れてしまうほどの美少女になって…。
もちろん小さい頃からお美しかったけれど…。
もっとも本人はご自分の美しさにちっとも気づいてはいないようだけれど…。
光は入浴後のボディクリームをメイドの茅野に塗ってもらいながら先程の梨央を思い返し、ふっと微笑む。
…そういえば…。
今日初対面した美貌の執事が頭に思い浮かんだ。
「…月城…でしたっけ?随分綺麗な執事ね。どんな人なの?」
鏡の中のメイド長に尋ねる。
茅野はにこやかに微笑みながら、光のほっそりとした美しい肩に高価なエリザベスアーデンのクリームを丁寧に塗りこみながら答える。
「はい。月城は帝大を首席で卒業した秀才と評判です。旦那様も大変信頼していらっしゃる第二執事でございます。…とりわけ梨央様は月城をとても頼っていらして…まるでお兄様を慕うように… そのご様子は微笑ましいほどです」
光は僅かに美しい眉を上げる。
「…そう。…あのはにかみ屋さんの梨央さんが…珍しいこと…」
先程のディナーの後の小客間で梨央が月城に甘えながら翌日の朝食のメニューに光の好きなものを加えるようねだっていた様子を思い出す。
月城はそんな梨央を穏やかに…しかし愛おしげに見つめながら承諾していた…。
「梨央様がまだお小さい頃は、月城がご本を読んでの寝かしつけがないと寝られないほどなついていらっしゃいましたの。…さすがに今はそれはありませんが」
「…そう…」
光の胸がちりりと小さく鋭く痛みのようなものを感じた。
「…美しい執事ですものね…梨央さんでなくても慕わしくなるわ」
光が魅惑的な唇の端に笑みを浮かべる。
茅野はそれを好意的な言葉と取り、
「恐れ入ります」
と答え、再び光の美しく照り輝く背中にクリームを塗り続けた。
「…月城…ね…」
光は誰にも聞き取れない声で呟いた。
鏡を見つめる瞳には、もはや先程の朗らかな笑みは浮かんではいなかった。
光を案内しながら、梨央は嬉しそうに見上げる。
「ここなら私がお会いしたい時にすぐに光お姉様のところに伺えるわ」
無邪気な笑顔が本当に愛らしい。
「梨央さんならいつでも歓迎よ」
笑いながら抱き締めると、梨央は光の腕の中で恥じらうようにきゅっと身体を縮めた。
…本当に、可愛いんだから…。
相変わらず無垢で初心で汚れなくて…。
しかも、見惚れてしまうほどの美少女になって…。
もちろん小さい頃からお美しかったけれど…。
もっとも本人はご自分の美しさにちっとも気づいてはいないようだけれど…。
光は入浴後のボディクリームをメイドの茅野に塗ってもらいながら先程の梨央を思い返し、ふっと微笑む。
…そういえば…。
今日初対面した美貌の執事が頭に思い浮かんだ。
「…月城…でしたっけ?随分綺麗な執事ね。どんな人なの?」
鏡の中のメイド長に尋ねる。
茅野はにこやかに微笑みながら、光のほっそりとした美しい肩に高価なエリザベスアーデンのクリームを丁寧に塗りこみながら答える。
「はい。月城は帝大を首席で卒業した秀才と評判です。旦那様も大変信頼していらっしゃる第二執事でございます。…とりわけ梨央様は月城をとても頼っていらして…まるでお兄様を慕うように… そのご様子は微笑ましいほどです」
光は僅かに美しい眉を上げる。
「…そう。…あのはにかみ屋さんの梨央さんが…珍しいこと…」
先程のディナーの後の小客間で梨央が月城に甘えながら翌日の朝食のメニューに光の好きなものを加えるようねだっていた様子を思い出す。
月城はそんな梨央を穏やかに…しかし愛おしげに見つめながら承諾していた…。
「梨央様がまだお小さい頃は、月城がご本を読んでの寝かしつけがないと寝られないほどなついていらっしゃいましたの。…さすがに今はそれはありませんが」
「…そう…」
光の胸がちりりと小さく鋭く痛みのようなものを感じた。
「…美しい執事ですものね…梨央さんでなくても慕わしくなるわ」
光が魅惑的な唇の端に笑みを浮かべる。
茅野はそれを好意的な言葉と取り、
「恐れ入ります」
と答え、再び光の美しく照り輝く背中にクリームを塗り続けた。
「…月城…ね…」
光は誰にも聞き取れない声で呟いた。
鏡を見つめる瞳には、もはや先程の朗らかな笑みは浮かんではいなかった。