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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第5章 Fly me to the Moon
光と梨央はアールヌーボー調の美しい装飾が施された天蓋付きの寝台の中で並んで横たわる。
寝台はほっそりとした2人の少女が横になってもたっぷりと余裕がある広さで、しかし梨央は光に抱きつくようにぴったりとくっつき離れようとしない。
そんな梨央を光は愛しげに抱き締め、優しく髪を愛撫するように撫でる。
「…梨央さんはまだまだネンネね。こんなにお美しいのに…」
「だって…光お姉様とご一緒できるのが夢みたいなのですもの…」
梨央は光の白いシルクのシンプルなナイトウェアの胸元に顔を埋める。
…光からはなぜか亡くなった母と同じ薫りがする。
光お姉様の香水はお母様と同じなのかしら…。
遠い記憶の中の母の薫りと光のそれが一致し、梨央をたまらなく切ない想いにさせる。
光は梨央の髪から頬、顎、首筋と撫でる箇所を変えながら、しなやかな手を止めようとしない。
「…ねえ、梨央さん。月城にはもう寝かしつけをしてもらっていないの?」
「え?…嫌だわ、お姉様。梨央はもう14歳よ。寝かしつけなんて子供みたいなこと…」
梨央は唇を尖らせて抗議する。
「でも、月城に随分甘えているわ」
少し意地悪な口調で光は言う。
「…そんな…だって月城は梨央の騎士だから…」
「騎士?」
梨央が頭をもたげ、やや誇らしげに口を開く。
「ええ。月城は梨央の騎士なの。…お父様がそう仰って梨央の為に月城を探して付けてくださったの。だから、月城はずっと梨央の側にいて護ってくれるのよ」
光はそれを聞くと、美しい眉を少し上げたがすぐに梨央の頭を自分の胸に戻し、抱き締めた。
「…そうなの。…あんなに美しくて若い騎士が護ってくれるなんて心強いわね」
「ええ。月城は本当に美しいの。眼鏡をかけているから分かりにくいけれど、あんなに美しいお顔は滅多にないわ。毎日見ている梨央ですら、見惚れてしまうほどよ。それに優しくて、頼もしくて…月城がいれば困ることなど何もないの」
美しい声で無邪気に月城を賛美する梨央をもう一度強く抱き締め、さらさらの髪にキスをする。
「…そう。良かったわね。…さあ、もう遅いわ。おやすみなさい。…その前に私にキスして?梨央さん」
梨央は差し出された光の陶器のように滑らかな頬に恥ずかしそうにキスをする。
「おやすみなさい、光お姉様。…明日もずっとご一緒よ?」
「ええ、もちろんよ。おやすみなさい。私の愛する梨央さん…」

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