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背徳のディスタンス
第2章 教育担当
「いいわよ、これも仕事の一貫だし」
動揺を隠そうとすれば、いつもよりもなおさらツンツンした言い草になってしまう。
けれど望は特に気にしたふうもなく、話題を変えて尋ねてきた。
「あの、そういえば堀内先輩は、彼氏さんとかいるんですか?」
「ええっ?」
唐突な質問に驚く。色恋絡みの話など、今まで望としたことがなかった。
望の後ろ、少し離れた場所には望と昼を食べていた男子達がいて、ちらちらとこちらを窺いながら聞き耳を立てていた。
(ああ、そういうこと?)
彼らに私の恋愛事情を探れとでも言われたのだろうか。それを下品な話のネタにでもするつもりなのだろうか。
そんな妄想が膨らむ。不快に思う反面、体の奥が熱くなるのを感じた。
(ダメよ……まだ)
「堀内先輩?」
望に顔を覗きこまれ、はっとする。
「そんなの、日野崎に関係ないでしょ? 仕事の質問は終わりよね? もう戻るね、また」
「……あ、はい、すみませんでした」
踵を返し、穂波の元へと歩く。つい冷たく返してしまったことにちらりと胸が痛んだけれど、あっちが下世話な質問をしてくるのが悪い。
そう考えることにした。