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背徳のディスタンス
第4章 欲望の行方

 奈々は再びパソコンに向き直った。もう望を相手にするのはやめよう、と固く誓う。
 こんな、六歳も年下の子供にからかわれるなんて。奈々のプライドが許さない。

「冗談ですって。見かけによらず、すぐにムキになりますよね、先輩って」
「…………」

 だんまりを決め込み、作業を進める奈々。
 望はさらに質問を重ねてきた。

「仕事のあと、何か予定ありますか?」
「……予定? 別にないけど」
「なら付き合っていただけません?」

 望がまた横から顔を覗かせる。その瞳が、意地悪そうに輝いた。
 ……嫌な予感がした。奈々は、馬鹿正直に予定がないことを口にしてしまったことを、激しく後悔した。

「まさか断りはしませんよね? 後輩、ましてや自分が担当している子との仕事以外でのコミュニケーションも、仕事の一環なんじゃないですか?」

 確かに望の意見は正しいし、奈々も実際上司からそう教わっているけれど。
 自分で言うな、とは思う。

「……わかったわよ。お昼、一緒に食べる?」
「はい、是非ご一緒させてください」

 憎らしいほどにこやかな笑みで望はそう一言。
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