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背徳のディスタンス
第4章 欲望の行方
「先輩、終わりました?」
宣言通り、十二時半頃望は再び奈々のところに帰ってきた。
「あと少し」
書面は出来上がっていた。ファイルに保存し、上司に送るだけだ。
奈々は文書に不備がないか入念にチェックし、送信ボタンを押した。
パソコンをシャットダウンし、上着を持って立ち上がる。
「お待たせ」
「お疲れ様です」
二人でオフィスを出た。
社内は静かだった。土曜日ということもあり、もともと人は少ない。課によっては休日も稼働しているところもあるが、それでも人数は少ない。
「……そんなに警戒しなくても、何もしませんて」
ふいにそう声をかけられ、奈々は無意識のうちに望と距離を取っていたことに気付く。
「パスタでいいですか? 今どこも混んでそうだけど」
「いいよ、日野崎が食べたいもので」
「俺に任せると、がっつり焼肉とかになっちゃいますけど大丈夫ですか?」
「……昼からお肉は、ちょっときついかも」
「でしょ? ならパスタで」
「うん」
ほっそりとした見かけによらず、肉食なのは意外だ。
そんなことを思いながら、奈々は望についていった。