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背徳のディスタンス
第4章 欲望の行方
「さっきのやつ、もしかして俺のこと書いてました?」
望が奈々を連れていったのは、オフィスビルから少し離れた場所にあるイタリアンレストランだった。
パスタとサラダ、ドリンクを注文し一息ついた頃、唐突に望が切り出してきた。
奈々は最初、いぶかしげに首をかしげたが、すぐに最後の文書のことだと思い当たる。
「ええ、あなたの実習記録。教育担当を離れるまでは私が記録して、上に送らないとだから」
「へー。先輩の評価次第でいつ一人立ちできるか決まるんですね」
「日野崎は早いでしょ。有能だもの」
彼の評価は教育担当である奈々自身にも関わる。早く彼を一人立ちさせようと意気込んでいた。
けれど今は別の理由でも彼に離れてほしいと願うようになった。そう、あの自慰を見られてから。
早く自分のもとを離れてほしかった。
……本当に?
体の芯が疼くのを感じ、奈々はテーブルの下で拳をぎゅっと握った。
心は嫌がってるはずなのに、体は望に見られたことに興奮している。
脅されて写真まで握られている今の状況でさえ。それが恐ろしかった。