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背徳のディスタンス
第1章 プロローグ
……やっぱり見られていたんだ。奈々の頬は羞恥と焦燥で、真っ赤に染まった。
社内で人目を忍んで自慰にふけっている様を、よりにもよって自分の後輩に見られるなんて。
言い訳すら思い浮かばず絶句する奈々の正面に、望は視線を合わせるように屈んだ。
年齢よりも若く見える、優しげで整った彼の顔。見慣れているはずなのに、今日はなんだかいつもと様子が違って見える。
「ねえ、どんなふうに触ってたんです? 俺の前でして見せてください」
「な、な、何を馬鹿なこと……」
「馬鹿なことをしてたのは先輩の方でしょう?」
「ち、違う……んん」
必死に反論しようとした口を、望の手のひらが塞ぐ。
「大声出したら聴こえちゃいますよ? 隣の人たちに。いいんですか? 先輩がここで何してたか、俺が説明してあげましょうか?」
「……っ」
なんてことを。そんなの、痴態をバラすぞと言っているようなものだ。
奈々は望を、きつく睨み付けた。内心酷く動揺していた。痴態を見られたこともそうだが、いつも奈々に見せている、素直で愛嬌があり、奈々の厳しい教育にも従順な望と今目の前にいる望は、なんだか別人みたいだ。