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新月の闇 満月の光
第9章 流転の兆し
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「只今戻りましたーっ! 」
パーティションの向こう側から元気が有り余った男の声が響いた。
木坂が、帰社して来たようだ。
「あ! 先輩っ! 先輩にお客様ですっ! エントランスでバッタリ会ったんですよ」
ふっと過ぎった嫌な予感。
当たって欲しく無かったのに………… 。
こういうのに限って当たる。
「おはよう御座います、『mahiro』さん」
にこやかに、微笑みを端整な顔に浮かべながら木坂の後ろから現れた男。
そいつを見て嘆息する俺。
マジで来やがった、こいつ。
「本当に、『Yume』さんのマネしてたんですね。うん、黒髪、黒目だと本当に印象が変わりますねぇ。これじゃあ言われないと、誰も『貴方』だと気付かない ………… 」
「当たり前だ。気付かれないようにやってるんだから ………… 」
俺の言葉に、合坂が『解らない』と、言うふうに首を傾げる。
理解出来ないのだろうな。
奴には。
うん、しなくていい。
これは、俺の事情だから。
首を傾げながら合坂が目にしたのは、デスクの上の手紙とプレゼント。
そして、3つ並んだダンボールの中の、大量のビンやら紙屑やら何やら。
「それって、『Yume』さん宛てのファンレターですか? 」
「そう。月末だから分類してマトモな物だけ『Yume』に渡してる」
そう言う俺に、合坂が「結構来てるんですね」なんて、呟いていた。
「この、3つのダンボールは? 」
「ただのゴミだ。分別して出してる」
「ビン、カンがやけに多く無いですか? 」
「おい、止めとけ」
そう言った奴は、俺の忠告を聞かずにビン、カンのダンボールを一瞥して、ゲッとヒキガエルが潰れるような声を発した。
「あっ!? 合坂さんっ! 」
中身を知ってる木坂も、気付いて声を掛けたが、時既に遅し。
だった。
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