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新月の闇 満月の光
第9章 流転の兆し


「あっそうだ、先輩。今日のゴミ当番、吉野ちゃんだから、ゴミ箱の中身、気をつけて捨てて下さいね 」




急に思いついたかのように言う木坂を、冷ややかな目つきで一瞥する。


当然、言われなくても解っている事を念を押された結果の『冷ややかな一瞥』で、あったのだが、どうやら木坂には俺の意図は、伝わっていないようだ。


キョトン顔からの~、瞼バシバシに俺は嘆息を吐く。





「そんな事……言われなくても解ってる。こんな気色悪いもん、女の子に見せられるか 」




俺は、瓶の入った手紙が無いファンレターを確認すると、ゴミ箱に設置されていたスーパーのレジ袋ごと、綴じた。


捨てに行く前に、残りの手紙をチェックする。


無論、余程の事が無い限り、封を開けたりはしない。


さすがの俺でも、プライバシーは、尊重する。


アーティストの個人情報は勿論の事だが、ファンの情報も同じ重みを持つ。


逸れくらい会社人であれば、当然守るべき優先事項の一つだと心得るべきだ。


そう心中で論じる中、とても怪しいファンレターを発見した。


パソコンのワードで印字された宛名。


それ自体は、ありふれた物では有るのだが、


差出人が無い。





如何にも怪しい封筒を透かして見てみる。


やはり、この程度では解らないか。


今度は封筒の縁を注意深く撫でてみる。




今度は、感じた。


わずかながらの段差。




「どうかしましたか? 」




俺の指を見つめていた合坂が、僅かな動きに反応した。




へぇ…… 。


こいつ良く見てるな…… 。




なんて、関心してる場合でも無いか、


俺は、合坂の問い掛けを手で静止して、封筒にハサミを入れた。


コツンと何かにハサミが当たる。


ドンピシャ。


思った通りだ。




疑う余地なんて無い──── 。

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