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新月の闇 満月の光
第9章 流転の兆し
時間にして、二時間程がたっただだろうか。
社長室に隣接している応接室に取り敢えず集まった関係者面々。
社長に俺、木坂と何故かその隣に合坂。
銘々が好き勝手な場所に着席して、中央のテーブルには脅迫文。
結芽とSPの姿はまだ無いが、時期に到着するだろう。
その前に、話を詰めておく事が得策だと思い、俺は社長の前に手紙を広げて見せた。
のが、つい先程の事だ。
分かりやすい。
至極、分かりやすく眉根を寄せた社長。
「うん、なかなかの病みっぶりだねぇ」
うーんと唸り声を上げる社長が手紙から顔を上げて俺を見た。
射抜くような視線に晒される。
目力が半端無い。
社長が俺を見据えたまま、にまっと微笑んで見せるのが、怖い。
迫力系美女の社長のこの笑み。
昔っから俺の苦手な物の一つだ。
そのシニカルな笑みを唇の端に刻んで、社長が言った。
「この手紙の主。『あの事件』の関係者だね」
そう社長が言って、意味不明に首を傾げるのは合坂ただ独り。
勿論、誰も説明する気なんてさらさら無い。
「結芽を狙う所が浅はかな考えっぷりだよ。まぁ、捌け口ひとつ無ければ矛先が向くのも致し方ないのかねぇ。コレでは結芽が不憫でならないよ。ったく ………… 」
前のめりに身体を傾けていた社長がドサリとソファーに背中を預けて息を付く。
右に同文。
俺も社長の意見に賛成だ。
「結芽にSPを着けるよ。良いだろ。護衛人は千夏にした。適任だろう? 」
「千夏って ……… 崎谷千夏かい? 」
俺は社長の問い掛けに軽く頷く。
「あいつ程の適任者は居ないでしょ」
「確かに。でも、良く受けてくれたねぇ。」
「其処はそれ。何とでも ……… 」
俺は、そう言ってほくそ笑んだ。