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新月の闇 満月の光
第9章 流転の兆し
崎谷千夏。
元々は小学一年生の頃からの腐れ縁的存在。
友達と、一括りで終わらせるにはなかなか難しい存在で。
近い言い方を模索してみると、悪友ってのがしっくり行くような気がする。
そいつが家業の警備会社を継いだ。
色々と手広く多方面に渡って事業展開をしているようで、要人警護もそのひとつ。
そして、要人警護、即ち『SP』が、千夏の最も得意とする仕事だった。
ああだこうだと、社長と打ち合わせをする内に、応接室のドアを叩く音がして人が二人、入って来た。
言うまでも無く、一人は、結芽。
そして、彼女の斜め後ろに控えている、
美女。
黒のパンツスーツに身を包み、すらりとした黒髪の麗人。
それが、崎谷千夏だ。
「『うーわっ!? 超美人』」
こいつら、ハモりやがった。
短期間で随分仲良く成ったじゃないか。
木坂と合坂。
お前ら名字も似かよってるもんな。
なんて脈絡もなく考えていると、地獄耳な悪友の、とっても嫌そうな顔とイラついた感覚を俺は見事に感じ取った。
「よぉ、ご苦労さん」
一応、此処まで結芽を連れてきてくれた友に、労いの言葉を掛ける。
でも、返ってきた言葉は
「よぉ、じゃねぇ。てめぇ、真紘、久し振りに生存確認してきたと思ったら、いきなり何なんだ。あの電話は」
見た目にそぐわない乱暴な言葉使いだ。
「何って言われても、そのまんまだけど? 」
そう、そのまま、簡潔に『結芽の全国ツアーが終わるまで護衛して』って言っただけなんだけどね。
あぁ、後、千夏に拒否権は無い。
とも言ったな。
んでもってまぁ、問答無用でスマホを電源ごと切ったから、掛け直しても繋がらなかっただろう。
そんな扱いを受けても、結芽を連れてやって来てくれるあたり、昔も今も千夏は変わらないでいてくれる。
気付けば、外野ががやがやと騒がしい。
大方、千夏の美貌と言葉遣いのアンバランスさに、餓鬼んちょ共が嘆いているのだろう。