この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
新月の闇 満月の光
第4章 動き始める時間
貴方を闇から引きずり出す、二度目の試み。
「さぁ、始めましょう。私は、心底真紘さんを愛しているから、貴方の子供を宿し育み、貴方との家庭を護る心積もりが有るわ。だから、貴方が少しでも、お姉ちゃんじゃなくて、私を見てくれていたら嬉しい…………」
女の私が此処まで言ったのよ。
はぐらかさないで、貴方の気持ちを教えて欲しい。
『目は口ほどに物を言う』私は、そのことわざを信じて、貴方の瞳を覗き込んだ。
揺れる貴男の瞳が、ふっと止まった。
「柚芽……。俺と亜依の間に夫婦の営みはたったの一度も無い。俺は、見てくれがこんなだから、経験豊富に見えるかもしれない。けど、俺は愛した女しか抱かない主義だから」
私は、目を見張る。
それは、愛されてるって、思って良いって、事?
「ねぇ、真紘さん……。私の事、好き?」
私の言葉に、貴方は、寂しそうに笑った。
「柚芽……。ごめん、言えない……。今は、言えない。何時か言うから、待っててくれるか? 」
──好きだ──
声に成らない声が、真紘さんから発せられた。
唇だけを動かして。
読み取れた貴方の聲。
私は、真紘さんの言葉に、ポロリと一滴、涙を零した。
これで、貴方と一緒に頑張れる。
わたし…………。
頑張れるから。
貴方の唇が、私の涙を捉える。
「柚芽…………」
そして貴方は、律動を再開し始めた。
あたしは、甘い声を上げる。
どことなく、貴方の全てが優しかった。