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新月の闇 満月の光
第7章 ルビーとエメラルド
「はい、『Yume』さん、此方が今回の衣装です」
メイク中に女性スタッフが持ち込んだのは、驚く程際どい衣装達。
胸元と背中の大胆なカット。
どうみても、ブラなんて付けられない。
ふぁぁぁぁ、ノーブラですかぁ!?
どうしょう……。
普段こんなの着ないから、昨夜、真紘さんが付けた大量のキスマークが隠せない。
本当…………。
どうしたら良いのよおぉぉぉ~。
真紘さんのど馬鹿っ!!
メイクスタッフが、着替えた私の姿を見て、目を見開いた後、苦笑した。
「それ、犯人、あの方ですよね……。凄い……ですね……」
ばれてる。
言葉を濁してはくれてるけど、流石、我が社が抱える専属スタッフ。
内緒にしている意味、無いですよ~!
真紘さあぁん!
無数のキスマークをじろじろと、女性スタッフに見られる私。
「何とか、ファンデで隠して仕舞いますね。しかし、まぁ、凄過ぎますね」
「南ちゃん、オフレコでお願いします」
「解ってますって、大丈夫ですよ。ただ、ね、スッゴい痛そうだなぁって、思っただけですから…………」
南ちゃんは、そう言って、にかっと笑って見せた。
あぁ、もう、馬鹿真紘…………。
私は、ファンデーションとおしろいで、何とか無事、キスマークを隠して貰って、撮影現場に足を踏み入れた。
現場が、ざわざわとざわついている。
カメラマンやスタッフも、知らされてなかった相手役。
監督だけが知らされているみたい。
今回は、CM。
監督もカメラスタッフも、皆、知人で構成されていた。
きっと、社長の計らいね。
私の緊張を解す為と、きっと、真紘さんが『mahiro』だと知っている人だけの集まり。
それだけ、真紘さんの正体を隠さなければならないなんて、何なのかしら?
ふと、私の中で疑問が生じた瞬間だった。