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新月の闇 満月の光
第7章 ルビーとエメラルド
「『Yume』さん入ります」
女性スタッフの声。
私の事を考えて、女性スタッフを多くしてくれていた今回の撮影。
木坂くんが、私を見た途端、
「めっちゃ、綺麗です」
ぼーっと見詰められて、そう言ってくれました。
お世辞でも、人にそう言って貰えたらとっても嬉しい…………。
そうそう、辺りがざわついているのは、どうやら今回の相手役のせいみたい。
家の社長の手腕なのか、彼が自ら決めたのか、十年も昔に引退していた『mahiro』を引っ張り出す…………。
それが、どんな経済効果を齎(もたら)すのか全く解らないけれど、私個人の意見としては、
『そっとしておいてくれたら良いのに……。』
なんて思う。
「『合坂 一』さん入ります」
急に、女性スタッフの声がして、辺りはしんと静まり返った。
えっ、合坂さん? 『mahiro』さんじゃ無いの?
スタジオが尚一層ざわめいた。
スタッフが、口にした名前。
それが『mahiro』さんじゃ無い事で、私の頭の中は不安と混乱に陥った。
そしてスタジオ内も…………。
どういう事?
社長、真紘さん…………。
合坂一、彼は私でも知っているイケメン俳優。
ただの、イケメンってだけじゃ無い。
自分の世界を広げる為に、色々な役柄をこなす勉強家だと、噂では聞いてる。
女癖が悪い。
とも。
『共演者キラー』と、仕事だなんて、私、大丈夫かしら?
気をしっかりと持っていれば、大丈夫よね。
私は、近寄って来る『合坂 一』に、失礼にならないよう、深々とお辞儀をした。
「『Yume』さんですね。合坂です。初めまして。俺、貴女のファンなんですよ! お会い出来て光栄です! 」
少し興奮気味に挨拶してくる彼は、何となく年齢よりも幼く見えた。