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新月の闇 満月の光
第7章 ルビーとエメラルド
「えっ、えっと……、ありがとうございます」
どもりながらも、にっこり笑って御礼を言う。
「アルバムの『春夏秋冬』の冬sideの『粉雪』が一番お気に入りなんですよ!」
キラキラとした、瞳を向けて来るのが、眩しい…………。
何気に怯んでしまう。
「ありがとう」
思わず口に付いた御礼の言葉。
粉雪は、アルバムにしか収録されてないんだけど、実は、私もお気に入りの一曲。
逸れを好きだと言われて、嬉しく無い筈がない。
私の緊張が、一気にほどけた。
その勢いで聞いた今日の撮影の事。
「私の相手役って……合坂さんなんですね。別の人だと聞いていたのですが……? 」
「ん、実は、横取りしてしまいました。フフッ、主役が『Yume』さんだと知って、どうしても共演したくて、家の社長に直談判したんです」
悪びれない声で、やんちゃな子供のようにはしゃぐ合坂君。
呆然としていると、
「引いちゃいました? 」
なんて、笑顔で彼は言ったの。
横取り…………。
それって、良くある事なの?
解らないよ。
「それじゃあ、始めましょうか」
私達の様子を見て、監督さんが言った。
そんなおり、ドアがそっと開いて、真紘さんと社長が入って来たのを私は全く気付いて居なかった。